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2003/06/13

<在日社会>盧武鉉大統領 同胞懇談会に出席

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    盧武鉉大統領と権良淑夫人を歓迎し、700人が参加した同胞懇談会(8日、赤坂プリンスホテル)

 日本を公式訪問した盧武鉉大統領夫妻は8日、駐日大韓民国大使館主催の「同胞懇談会」に出席した。盧武鉉大統領は席上、「北の核問題で韓日が対話優先で足並みをそろえ、韓半島に平和をもたらす信念を世界に示すために訪日した」と、東北アジアの平和構築に向けた強い決意を表明した。また地方参政権獲得運動、民族金融機関問題でも努力すると説明した。また同日行われた民放テレビ主催の日本市民100人との対話でも、「未来志向の韓日関係」を強調した。

 盧武鉉大統領夫妻は8日午前、赤坂プリンスホテルで、在日同胞約700人が参加した同胞懇談会に出席、あいさつし、在日同胞の歓迎に謝辞を述べた。

 盧武鉉大統領は、「北朝鮮の核問題によって韓半島は不安を感じさせる状況に陥り、とても悩んだ。また大統領就任後、韓米同盟が悪化し、経済も悪くなると批判を受けた。韓米関係の大切さを世界と国民に示すために訪米した。今回の訪日も北問題で日本との足並みをそろえるためだ」と、訪日の意図を説明した。

 歴史認識、過去の清算問題については、「言及しなくても終わったわけではない。言及してすぐにどうなるという問題でもない。過去の歴史よりも未来をどう切り開いていくかを考えないといけない。過去の歴史が不安材料にならないようにしないといけない」として、日本政府に対し今回歴史問題を言及しなかったことへの理解を求めた。

 さらに地方参政権獲得運動については、「いますぐ出来る問題ではないが努力する」と語った。民族金融機関問題、在日の法的地位の問題についても努力すると話した。

 会場には薩摩焼の第14代の沈寿官さん、芥川賞受賞作家の柳美里さん、プロ野球解説者の張勲(張本勲)さんらも出席した。

 懇談会では、同胞を代表し金宰淑・民団中央団長から沈寿官さんが制作した薩摩焼の花瓶が盧大統領に贈呈された。

 沈寿官さんは「花瓶は『薩摩錦手胡蝶乱舞図花瓶』。巨大な物や強暴な物が幅をきかす時代は好ましくない。小も大もそれぞれを尊重しあう調和のある世界の実現を願い、その旗手としての閣下の活躍を祈って朝鮮時代の初期の花瓶の形に群舞乱舞の図をデザインした」と説明し、「大統領には健康に留意されて、初心を忘れず活躍していただきたい」と述べた。

 李進熙さんは、「毅然とした姿勢を貫き、庶民的で率直な語り口で(北問題を)平和的に対話で解決するのが韓国政府の一貫した立場であると説いたのは嬉しく、日本の人びとも『庶民大統領』の印象を受けたと思う」と述べた。さらに「過去の歴史を見据えて、未来志向で韓日関係を築いていくこと、在日同胞の問題に関心が深いこと、拉致問題について日本の立場に理解を示したことなど成果は大きかった」と話した。

 同胞懇談会には朴一哲・本紙会長、朴恵美・本紙社長、金時文・本紙編集局長も出席した。

 ◆ 日本国民との対話番組に出演

 盧武鉉大統領は8日、日本の民放TBS(東京放送)の企画番組「韓国・盧武鉉大統領、本音で直接対話」に出演した。インターネットやテレビ放送で公募した日本市民と対話をする番組で、職業も学生、主婦、会社員など多様だ。

 当日は東京のスタジオに100人、大阪のスタジオに30人が集まり、盧大統領に様々な質問をした。参加者には在日青年も選ばれており、高校生の李剛さんが質問して、大統領が答える一幕もあった。

 韓国に強い関心を持ち、韓国語も勉強しているタレントのSMAPの草ナギ剛さんも参加。流暢な韓国語で盧大統領に質問した。

 番組の最後には、「今後、韓日関係はよくなると思うか」との質問が東京の参加者100人に行われ、98人が良くなると答えた。

 盧武鉉大統領は「日本の国民と直接対話が出来てよかった」と感想を述べた。


 -李剛(大阪・高校生)さんの質問

 「私は在日韓国人ですが、今まで日本の社会から色んなものを受けて育てていただいたと思っています。将来は、今まで受けたものを日本の社会に還元したいと思っています。それが韓国と日本、そして北東アジアひいては世界の平和と繁栄に貢献できると思っていますが、それに対して大統領の感想をお聞かせください」

 -盧武鉉大統領の答

 「これまで多くの韓国人が世界に出て暮らしてきた。私たちは幼い頃、例えば、中国人やユダヤ人が異国の地でも国籍や言語、家族の文化を捨てないで暮らしていることは非常にいいことだと言う教育を受けてきた。
 しかし、世の中は変わってきて、世界がひとつに統合していく中で、必ずしも国籍を維持することが称えられることではなくなってきている。どの国の人でも自国の文化の誇りを捨てないにしても、現地の文化、体制に適応して、社会の一員として定着することも大切だ。従って、李君が話したことは進歩的だと思う。自分のアイデンティティーを保ちながら、現地社会の一員として適応し貢献するという考えは2つの共同体をひとつにつなげる力になり、架け橋になる。
 国籍問題に対しても、もっと自由に考え、2つの民族を互いにひとつにつなげていく架け橋として、日本にいる同胞が大きく貢献するという考えがいい考えだと思う」