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2005/09/30

<在日社会>「鳳仙花」発刊20号・在日女性文学発展の一助に

  • zainichi_050930.jpg

    在日女性文学について講演する安宇植さん

 同人誌「鳳仙花」と韓国文化院の共催で「日韓をつなぐ文化交流の集い」が24日、東京・南麻布の韓国文化院で開かれた。「鳳仙花」20号の発刊を記念しての集いで、250人が参加した。

 集いは安宇植・桜美林大学名誉教授の講演、「日韓の女性たちが紡いだ言葉の輪」で始まった。安教授は、「20号に掲載された文章は、レベルが高いものが多い。鳳仙花が在日女性の文章発信の場となり、ここから金真須美さんのような作家も誕生した。今後も多くの女性たちの声を紹介してほしい」と期待を寄せた。

 その金真須美さんは、『メソッド』『羅聖(ナソン)の空』などの著書を持つ在日3世。この日のために大阪から駆けつけ、4世の娘を持つ母としての思いを表現した自作の詩「お母さん、私、どこの国の人と結婚してもいいよね」を、クラシックの名曲をバックに朗読した。

 続いて金福実国楽研究所所長として日本で韓国伝統音楽の紹介・普及に努める金福実さんが、韓国を代表する伝統芸能パンソリ(一人の唱者が鼓手の伴奏でうたう語り物)を披露した。韓国でもっとも知られる悲恋物語「春香伝」の一節をうたうと、会場からは大拍手が起きた。

 続いて行われたレセプションで鳳仙花主宰の呉文子さんは、「鳳仙花は多くの人の支援のもと、日韓の交差点、在日女性の交差点を目指してきた。その一助になったと自負している。50代で始めて15年経ったが、今後は後継者育成に力を注ぎたい」とあいさつした。

◇「代弁者の役割」安宇植さんの話◇
 
 「戦前、戦後、文章を書く在日韓国人女性はほとんどいなかった。その後、(50年代に)『にあんちゃん』を書いた安本末子さん、(日本の女子高生を殺害した)小松川事件の犯人、李珍宇との往復書簡集を63年に出した朴寿南さんらがいる。

 70年代になると、73年の金大中拉致事件、文学では詩人の金芝河が74年に死刑判決を受けるなどの事件があり、彼らを救援し日韓連帯を深めようとする日本の市民運動が盛んになった。

 その過程で在日の問題にも視点が向けられるようになった。『在日』という言葉が市民権を得るようになり、金達寿、金石範など在日文学者も世に出てきた。
 
 そのようなうねりの中、在日女性の声を代弁するものが求められるようになった。そして同人誌『鳳仙花』が登場した。第20号を読むと、投稿者の年代層が幅広くなり、1世から3世まで文章が寄せられている。各世代のエネルギーが『鳳仙花』で一つになったことを実感する。今後も頑張ってほしい」