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2005/07/29

<在日社会>韓信協総会・守りから攻めの経営へ

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    「攻めの経営」を打ち出した第54回韓信協総会

 在日韓国人信用組合協会(韓信協)は第54回通常総会を都内のホテルで開き、ペイオフ完全解禁後の厳しい金融環境に対処するため、自己資本の充実化、収益基盤の強化、リスク管理体制の強化など「健全経営」基盤を固める一方、積極的な融資活動を展開するなど「攻めの経営」に取り組むことを打ち出した。不良債権処理など従来の「守りの経営」一辺倒からの大きな方針転換だ。また、引き続き会員組合間での統合・合併を推進することも確認した。

 洪采植・韓信協会長は冒頭のあいさつで、「会員組合は、4月のペイオフ完全解禁を無事乗り越えており、預金も3月末現在で平均4・2%増えている。懸案の本国政府支援金156億5000万円が実現し、会員組合の互助基金も7月から運用を開始した。不良債権問題は解決してきており、融資回収の段階にある」と現状が好転していることを指摘し、「しかし、厳しい金融環境を乗り切るためには意識改革が必要で、これからは守りから攻めの経営が求められる。この攻めの経営には合併も含まれる。経営基盤を強化して民族金融機関としての責務を完遂すべきだ」と強調した。

 注目すべきは「守り」から「攻め」の経営を打ち出した点。ペイオフ完全解禁を何とか切り抜け、政府支援金も実現するなど環境変化があったからだ。政府支援の実現は韓信協組合の信用力アップにつながり、会員組合相互間の助け合い資金の性格がある57億円の互助基金は、積極融資により預貸バランスが崩れた場合の調整用にも活用される。

 さらに日本経済も不況から脱出、回復の動きを見せており、資金需要増大が見込まれ、これに積極的に対処して業績回復を図るチャンスと位置づけている。

 事実、韓信協は、日本の信用組合全体を取り巻く環境について、①数年続きの預貸金減少傾向に歯止めがかかり、業績回復の機運がある②不良債権処理、店舗の統廃合などのリストラ効果が見え始めている③資本増強で経営マインドが好転していると分析、韓信協会員組合もこのような環境の中、経営基盤を回復しているとみている。

 今年3月末で会員10組合の預金高合計は5522億5600万円。前年同期比4・2%増であり、伸び悩んでいた預金に回復の兆しがはっきりした。

 しかし、貸出は1・69%増の4072億9700万円にとどまっており、預貸率は73・8%だ。積極的な融資体制確立を大きな課題に設定、これまでリストラ一辺倒を改め、有能な人材確保・育成の好機であるとも認識している。

 だが、この攻めの攻撃のためにも、健全経営がおろそかであっては元の木阿弥になる。特に、金融当局は今後2年間、信用組合に対しても数値目標を付した事業計画の提出を求めることにしており、韓信協としても残った不良債権処理に全力を傾け、特に自己資本比率を充実化することが迫られている。引き続き、経営基盤の強化が求められていることに変わりはないわけだ。

 統合・合併も大きな課題だ。総会では、「金融当局は合併推進を継続しており、会員組合としても生き残るために今後も合併は避けられない」と継続合併推進を打ち出した。九州地域3組合の合併問題については、当面、九州幸銀と佐賀商銀の合併を推進、その後長崎商銀との合併も進めるとの報告された。

 金泰汶・九州幸銀理事長は、「3組合同時の合併が望ましいのだが、当方の体力から見て困難と判断、まず規模の小さい佐賀商銀との合併をすすめることにした」と語った。

 合併問題について、信組幹部らの間には「規模の拡大のため合併は不可欠」「早く大合併して銀行化すべき」という声もあった。

 また、昨年7月に脱退した近畿産業信組との関係については、「民族金融機関であるので、近い将来に再び手を携えるべく努力を継続する」との方針を確認した。