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2005/07/22

<在日社会>劇団四季・韓日演劇交流を促進

  • zainichi_050722.jpg

    『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ役に抜てきされた韓国出身の崔恩実さん(左)

 日本最高峰のミュージカル集団「劇団四季」(浅利慶太代表)が、韓国の研修生受け入れに力をいれている。現在31人が役者修行をしており、『オペラ座の怪人』の主演女優に崔恩実さん(チェ・ウンシル、27)がこのほど抜てきされた。また制作部でも1人働いていて総勢32人。韓日の懸け橋となる存在だ。

 劇団四季は現在、日本全国に10の専用劇場を持ち、年間のステージ数は3000回を超える。

 70年代、『ウエストサイド物語』『コーラスライン』などのミュージカル公演で高い人気を得て以来、ミュージカルが劇団の大切なレパートリーとして定着するようになり、80年代に入ると『オペラ座の怪人』『キャッツ』などのロングラン公演を成功させ、現在に続くミュージカルブームをけん引している。

 ミュージカル俳優の育成やオーディションによる若い才能の発掘などにも積極的で、600人を超える団員が所属するまでになった。

 一方で諸外国の優れた舞台芸術団体との交流にも力を入れ、特に韓国とは長年に渡って密接な関係を築いてきた。94年に韓日文化交流事業の一環として訪韓公演が実現し、『ジーザス・クライスト=スーパースター』を韓国国立中央劇場で披露した。これは韓国で正式に日本語上演が認められた最初の舞台芸術で、完成度の高い演劇に多くの賞賛の声がおきた。

 そして日本での長年に渡る俳優育成システムをもとに、韓国出身者の俳優養成を決意。2003年、2004年と連続してオーディションを行い、現在までに31人の研修生が四季で活動するまでになった。研修生は日本で、日本語、ダンスなどの厳しいレッスンを毎日受けるが、生活費などを劇団が負担しており、恵まれた環境での練習となっている。

 その2003年合格者の中から、今回『オペラ座の怪人』の主役クリスティーヌ役を射止めた女性が出た。崔恩実(27、芸名・高木美果)さんである。四季のレパートリーでも重要なこの作品で、外国出身の女優が主役の大役を射止めたのは初めてだ。14日の初舞台では堂々の演技を披露し、才能の豊かさを感じさせた。

 ちなみに四季では韓国人俳優に舞台に立つとき本名、芸名どちらを使うか本人に任せており、崔さんは芸名で登録した。浅利代表が名付け親となるほど才能を買っている存在だ。

◆在日も6人 主役級で活躍◆

 劇団四季では、俳優養成以外にも韓日文化交流事業に携わっている。ミュージカル俳優を目指す韓国人俳優および学生を選抜して、劇団四季の活動を知ってもらう「韓国研修団」を2004年1月と今年1月に実施し、2004年は39人、2005年は30人が参加し、約2週間滞在して作品およびレッスンを見学。

 また韓国芸術劇場のスタッフを日本に招き、3週間四季の作品見学や公演準備に参加してもらうなどの活動をしている。

 ほかにも韓国の舞台芸術団体関係者や韓国メディアの招請事業などに力を入れている。
 
 これらの活動は「ミュージカル文化をアジアで共有したい。韓国の俳優は声のいい人が多いので、それを育てることで韓日文化交流に貢献したい」との浅利代表の強い熱意で進められている。

 なお四季には在日韓国人の俳優も現在男性3人、女性3人の計6人所属しており、『キャッツ』『ライオンキング』などに主役クラスで出演している。

◆「責任感持ち舞台に」 崔恩実さんの話◆

 「舞台のレベルの高さ、俳優養成システムが魅力的でオーディションを受けた。レッスンは厳しくても毎日練習できるのは幸せだし、浅利代表の韓国人俳優を育てようという熱意に感動した。日本語も必死に覚えた。『オペラ座の怪人』の主役に抜擢された時は、興奮するよりも責任感を強く感じたが、精一杯の演技をするよう毎日努力している。将来は『アイーダ』に挑戦したい。在日の人たちもぜひ大勢見に来てほしい」