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2005/05/20

<在日社会>在日2世の世界的建築家・伊丹潤氏に仏文化勲章

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    いたみ じゅん 本名・庚東龍(ユ・ドンヨン)1937年、東京生まれ。武蔵工業大学建築学科卒。92年ナショナルオーシャニックミュージアム国際コンペ最優秀賞、01年韓国建築家協会作品賞。個展、グループ展も多数開催。

 世界的な建築家であり、画家としても活躍している在日韓国人の伊丹潤さんが、フランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章することが決定した。2003年7月にフランスの国立ギメ東洋美術館で開催された「伊丹潤展=伝統と現代」、そして一連の建築作品が高く評価されたものだ。

 伊丹さんは韓国と日本の伝統様式を近代建築に取り入れ、石や木など自然の素材を生かした製作で独自の世界を確立してきた。電子的テクノロジーでなく、手の痕跡や身体性の回復にこだわり、手でスケッチを行い、現代建築に大きく欠落している野性味や温もりにこだわり続けている。建築それ自体を現代美術としてとらえているのが大きな特徴である。

 「土、木、鉄などの素材を無の媒体としてとらえ、その無の媒体が芸術作品となる。日本から学んだことは『無』だ。韓国からは伝統と歴史の中の土、焼物、民家、石積みを学んだ。こういったオリジナリティーをフランスが理解し、展示会を企画してくれたのだろう」と述べ、建築家と同時に画家としても活躍、多くの作品を残していることについては、「私自身が美術と建築のはざまにいるし、はざまにいると美術も建築もよく見える。それは韓国人と日本人の間にいる在日のようなものだ」と語っている。

 フランスの国立ギメ東洋美術館は、東洋の遺物、美術品を展示している伝統と歴史ある美術館で、国際的にも有名。東洋人が個展を開いたのは2003年7月~9月にかけての伊丹潤展が初めてである。

 フランスの芸術文化勲章は、1957年に当時の文化大臣アンドレ・マルローにより制定された勲章。フランス国内、あるいは世界で芸術・文化の創作活動においてすぐれた実績をあげた人物、または同分野の発展に著しく貢献した人物に授与される。

 シュヴァリエは4種類の勲章の一つで権威あるものとして知られている。韓国人の受章は指揮者の鄭明勲氏に次いで2人目。在日では初めて。授章式は秋の予定だ。

◆「世界的評価光栄」 伊丹潤さんの話◆

 「これまでの活動を評価されたもので、感動している。韓国や日本という枠を超えて世界的に評価されたことはとても光栄だ。在日の後輩たちにも大きな励みになればと思う。受章を励みにこれからもがんばって活動を続けていきたい」