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2005/01/01

<在日社会>西日本最大の老人ホーム開館

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    13階建ての老人ホーム「メリィハウス西風新都」。484室すべて個室で、抜群のロケーションだ

 JR広島駅から車で20分ほどの新興住宅地の小高い丘に西日本最大規模の有料老人ホーム「メリィハウス西風新都」がオープンした。周囲を見渡すと、1994年に開催された広島アジア競技大会のメインスタジアムがすぐ近くに見える。すべて個室の484室。その規模もさることながら、介護付きで24時間体制の診療所を併設するといういままでにないユニークな老人ホームだ。経営するのは在日2世の姜仁秀会長(八千代病院理事長)。姜会長の地元での評判は高く、昨年12月20日の落成記念式には政財界を含む各界代表650人が出席。在日社会からも多くの人が祝福にかけつけた。新年1月7日から入居が始まるが、「終の棲家」として新たな伝説が始まりそうだ。

 広島市の中心部から北西に広がる西風新都は、人口10万人規模で建設が進められている複合型機能を持つ新都市。現在の人口は4万3000人。メリィハウスは、この西風新都の新名所として誕生したが、従来の老人ホームにはないさまざまな特徴を持つ。充実した施設、行き届いたサービス、加えて入居費をとらず食事付きで月15万7500円の低料金はとても魅力的だ。
落成記念式で姜会長は、①入居者が楽しくゆったりと過ごせるように面白い仕掛けを随所に凝らした②医療の全面的なバックアップがあるので安心して過ごせる③八千代病院で13年間培った素晴らしい看護と介護のサービスを全職員のモットーであるもてなしの心で提供する――として、「おそらくこれ以上の内容でこれ以下の料金での老人ホームは不可能だろう」と強調した。
 
 祝辞を述べた金演権・駐広島総領事は「大変立派な施設だ」と讃え、金井宏一郎・広島日韓親善協会会長(中国放送会長)は「高齢者福祉に対する高い志の実践だ」と絶賛した。片岡和之・UFJ銀行執行役員は、「利用しやすい料金設定ができたのは大変意義深い。新たなビジネスモデルだ」と評価した。

 また、金健治・在日韓国商工会議所会長は、「在日にまた一つ自慢できるものができた」と述べ、在日の同胞老人ホーム建設を進めている金定子会長ら在日韓国婦人会中央本部のメンバーも真剣に見学していた。地元の民団・総連のトップも参加、在日社会でも姜会長の幅広い人脈が窺われた。

 施設内容は驚くばかり。調度品の一つひとつに高級感があり、例えばジャグジーの洗面台と鏡のつくりなどは高級ホテル並みだ。「一番温かい雰囲気を醸すようにつくった」という13階のリビングには暖炉もあり、ゆったりとし気分になれそうだ。廊下はすべてフローリングで、偶数階が洋風、奇数階が和風とフロアに色彩の変化があり、老人ホームにありがちな味気なさをなくす工夫がこらされている。

 温泉を掘り当て、温泉療法も可能になった。温泉の風呂に入ると、檜の香りに思わず癒される。温泉プールは、ホテルのプールサイドを思わせる上品さ。そして、是非とも触れておかなければならないのは、1階、2階、12階、13階に作られた5つの多様なガーデンだ。植物と触れ合いながら五感を通して生き生きとした生活をすごしてもらおうとの試みである。さらに、これら施設も魂が吹き込まれてこそであるが、笑顔を絶やさない職員たちの親切な応対に、姜会長のいう「もてなしの心」がしっかり身に付いていると感じた。

見学者の間からは、「全館癒しの空間であり、これはもう老人ホームの概念をこえている」という声もあった。初めてケースワーカーになったという20代の女性は、「家庭の雰囲気が出ていて気分がいい。自分も楽しく働けるので、入居者もきっと喜んでもらえると思う」と語った。とても大切な言葉に思えた。

施設概要

13階建てのこの老人ホームは、敷地面積5374平方㍍、延べ床面積2万4461平方㍍の大きさで、部屋は全室23平方㍍の畳14個分の広さ。ベランダの奥行きは1㍍70センチと広々としている。
X線室、リハビリ室も備えた八千代クリニック、鍼・灸にマッサージ、アロマテラピーも受けられる。レストラン、カラオケ室があり、ショッピングもできる。温泉プールにサウナ、理容室に美容室、工房に図書館、よろず相談室、そして5つのそれぞれ特徴のあるガ
ーデン。生活していく上で何が大切なのかを丁寧にデザインした施設内容だ。


金演権・駐広島総領事の祝辞

 ホテルのような立派で大きな施設をつくってくれた姜理事長に敬意を表したい。みなさんが老後を心配している中、うらやましい限りだ。ここは、すぐ近くに高速道路が通っており、交通の便も非常にいい。病院内にある素晴らしい温泉施設を見て驚いたが、姜仁秀・理事長は運の強い人だと思った。いい事業を展開しているから運も向いてきたのだろう。八千代病院に次いで、ここでも温泉を発見した。

 医療は24時間体制なので、入居者は安心できる。八千代病院からも医師や看護師が派遣され、300人の職員のうち中堅幹部は八千代病院から来ていると聞いている。モットーとする「もてなしの心」で奉仕されることだろう。いつまでも愛されつづけ発展をとげ、経営も順調にいくことを願う。

金井宏一郎・日韓親善協会会長の祝辞

 大学、スポーツ、企業の町に全く新しい風景が誕生した。土地機能の強化という点でも嬉しい。いま日本は4人に1人が高齢者であり、本格的な高齢化社会を迎えている。
姜仁秀・理事長は10余年前、お年寄りのために医療や介護の手助けをしたいと八千代病院を開院された。これが社会に対する貢献の第一歩。その理想実現に向けた2つ目のステップがメレィハウスのオープンといえる。

 表千家の師匠でもある夫人(鄭明子氏)と協力して、非常に高い志を持って医療・介護で社会に貢献され、患者をいち早く「患者様」と呼び、ベッドに縛り付ける拘束を取り止めた。メリィハウスも八千代病院で培われた高い理想と高い技術をさらに充実化させるため建設された。姜高齢者の理想郷になることを願っている。