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2007/06/29

<在日社会>朝鮮通信使400周年に際し、日韓を自転車で縦断

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    韓日の自転車横断に挑戦する申允哲君(左)と宋昌勲君

 江戸時代に韓日間の善隣友好関係を築く大きなきっかけをつくった朝鮮通信使が日本に派遣されて400周年を迎えた今年、日本と韓国を自転車で縦断し、韓日友好の輪を広げようとする計画が韓国の若者により進められている。来月初め札幌を出発、北海道から板門店までを2カ月かけて自転車で走破しようというもの。行く先々でどんな発見があり、どんな友情の種が蒔かれることだろうか。

 日本を「愛輪」で走破するのは申允哲君(シン・ユンチョル、19)、延世大学1年生だ。来月4日に空路札幌入りし、日本縦断に向け6日出発する。日本で最終到着地福岡に到着するのは8月9日の予定。1カ月余に及ぶ日程だ。

 主なコースは、札幌を経て函館―青森―盛岡―仙台―福島―宇都宮―東京―小田原―静岡―浜名湖―鳥羽―伊勢―奈良―大阪―岡山―高松―松山―別府―北九州―福岡。34都市で宿泊。東京には7月19日、大阪には30日に到着予定。

 1人で黙々とペダルを漕ぎ、自然を愛でながら行く先々で人々と触れ合い、交流を図る計画だ。3000㌔を自転車で縦断するのは相当な厳しさがある。果たして難行を突き通せるか、青春の大いなる挑戦だ。

 今回の自転車縦断計画のきっかけをつくったのは、日韓経済協会が主催する「日韓高校生経済キャンプ」。当時、同協会会長だった瀬戸雄三氏(現アサヒビール相談役)が発案、「日韓高校生交流キャンプ」と名称を変え現在も継続されているが、韓日の高校生の交流の場となり、OB会まで組織されている。申君はその第1期生。

 このキャンプ参加をきっかけに1年間、交換留学生として日本の高校にも通い、「日本人大好き人間」になった。外交官をめざす申君は、韓日は東アジアの未来を担う責任あるパートナーであると考え、お互いがより深く知り合う必要を痛感。今回の「自転車旅行」がそのひとつのきっかけになればと考えている。

 韓国ルートは、日本ルートの申君に合流して、延世大学1年生の宋昌勲君(ソン・チャンフン、18)と2人が釜山から板門店まで北上する。自転車で休みなく数千㌔もの距離を走るのは大変なことだが、2人とも「人や風物に触れながら日本、韓国を肌身で知り交流を広げる機会になれば素晴らしい」と語っている。

 1962年、23歳の堀江謙一青年が1人乗りヨットで太平洋横断に成功した。手記「太平洋ひとりぼっち」の中で、「いつか太平洋をわたったる」と心に決めていたと綴っている。必ず成功すると信じ込んでいた。この太平洋横断成功について、「青春はこれだと思う。そうしたある意味で無謀な青年のチャレンジが人類の歴史を切り開いてきたのだ」と語った人がいた。

 もちろん、今回の自転車による日本・韓国縦断はそれほどおおげさなものではない。だが、韓日関係を前進させる小さくても意義ある試みだといえる。沿道の皆さんも声援をおくろう。

◆韓日交流を身体で体験 ――申 允哲君(延世大学1年)

 2004年に僕は日韓経済協会主催の「韓日高校生経済キャンプ」(今は韓日高校生経済キャンプとなる)の第1回と第2回に参加し、日本の高校生たちと両国が協力してできる1つのアイテムを一緒に考えました。このプロジェクトをやりながら感じたのは、両国の高校生たちがそれぞれの国を相手の国にもっと近づけるということ。僕はこのキャンプの経験を活かし、その翌年、日本の麻布高校に1年間交換留学しました。その後も同キャンプに見学で参加したり、OB会にも積極的に参加することになりました。

 2005年から麻布大学に通い、1年間日本で生活しながら気づいたことがあります。それは、両国の人たちがお互いをあまりにも知らないことです。日本で韓流ブームがあっても、韓国で日本料理の人気が高まっても実際に韓国と日本の人たちは自分たちを、そして相手をよく知らないのです。

 両国は東アジアの未来の責任を負うパートナーであると思います。お互いをもっと知るほど、一緒に力を合わせればもっと大きな力が出るでしょう。外交官を目指す僕は日本人と韓国人をもっとよく、深く知りたいと切実に思うようになりました。このような動機から、旅行が好き大好きな僕は、夏休みという絶好のチャンスを利用して車、バスや電車などでなく、自転車旅行で両国を回ってみたいと思いました。自転車旅行をしながら様々な人に出会って様々なことを聞き、そして様々なことを学び、韓国と日本をもっとよく、深く知りたいです。

 百聞は一見に如かず!

 韓国と日本のきれいな風景も見ながら、両国の人々との交流を体験したいです。

 韓国の諺に、若い時の苦労はお金で買ってでもせよという言葉があります。このようにこの旅はとても厳しいでしょうが、それ以上の価値があると思います。この縦断が、日本の同年代の学生たちに韓国をもっと紹介する機会になればと思います。