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2007/06/08

<在日社会>東京韓国学校の内紛激化

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            尹己淑校長(左)と孫性祖理事長

 内紛が続く東京韓国学校(新宿区若松町)で、理事長による校長への罷免通達という事態が発生した。孫性祖理事長(ソン・ソンジョ、73・写真右)が5日、尹己淑校長(ユン・ギスク、58・写真左)に罷免を通達。尹校長は通達受け入れを拒否しており、事態は長期化しそうだ。

 事の発端は2元教育をめぐっての意見の相違にある。同校は在日の子弟のために1954年に作られた学校で、在日の子供たちのために日本語中心の授業で民族教育に取り組んできた。

 しかし、日本の学校に進学する生徒が増えるに伴い年々在日生徒が減少。逆に新規入国の韓国人数が増えるに伴い、彼らの子弟の入学が急増した。現在では韓国語中心で、韓国の大学進学を目指す生徒の数が増えている。生徒数の9割以上が新規入国者の子弟で、いわゆる在日特別永住者の生徒は1割を切る状態となっている。

 そのため韓国語が堪能な生徒と日本語が堪能な生徒など、背景の違う生徒が混在する学校となった。現在、韓国語で韓国と同じ教育課程を学ぶ9割を占める「K班」と、日本語中心の授業の2元教育を行い、日本の大学などへの進学を希望する割合の高い1割弱の「J班」「永住者課程」などに分かれている。

 以前は在日生徒クラスがあるのは高等部だけだったが、在日生徒の減少に歯止めをかけようと、理事会では2004年から中等部にも在日永住生徒の専門クラスをつくった。しかし、運営には費用や教師の負担などが生じるため、PTAの一部から批判が起きるようになった。

 そして2005年、尹校長がソウルから赴任し、カリキュラムに携わる中、英語授業での運営方法をめぐって、理事会側と、校長・PTA側の対立が表面化した。

 その後、尹校長が「韓国政府に問い合わせたが、韓国学校で日本語の課程を正規課程にはできないとの返答を得た」と表明。またPTA役員の一部が学内でデモをするなどの事態になった。教職員の中でも理事会側と校長側の対立が起きるなど泥沼化し、2月の卒業式の席上でも、生徒の前で理事長と校長・PTAの対立が繰り広げらるようになった。

 4月10日、駐日韓国大使館と民団中央本部の仲介で会合が持たれ、両者とも鎮静化に向け努力することで合意したが、その後も対立が収まらず、今回の理事長による校長罷免措置となった。尹校長は韓国政府教育部から派遣された公務員の立場にあるが、孫理事長は「任命権は理事長にあり問題はない。今後は校長を派遣ではなく公募で決めたい」としている。

 これに対し尹校長は、「理事長の通達を受け入れることは出来ない。韓国政府の判断を待ちたい」と罷免を拒否、公務を続けている。


■東京韓国学校とは■

 東京韓国学校は1954年、在日韓国人子弟のために設立。現在の生徒数978人。在日永住者の生徒は役80人。初等部から高等部まであり、各2クラスで全24クラス。鉄筋4階建て。敷地面積約6000平方㍍。専任教師38人、非常勤講師34人。収入は学費3億円、韓国政府補助金7000万円、別途に派遣教師給料約6000万円で計1億3000万円、理事会1200万円、民団100万円、東京都補助金1000万円となっている。東京都新宿区若松町。