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2007/02/09

<在日社会>韓国民団・政府補助金めぐり混乱

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    政府補助金問題を話し合った全国地方団長会議(2日)

 在日韓国民団(鄭進団長)に対する韓国政府の補助金をめぐり、異例の事態が続いている。事の発端は昨年の政府監査で補助金の使途に関して、虚偽報告、使途不明金などが指摘されたことだ。韓国政府はその対策の一環として、中央への一括支給方式を変更する旨を伝えた。だが民団中央は反発し、2日の緊急団長会議で、従来通りの一括支給を求める決議を行った。

 2日の緊急団長会議では、①補助金の一部地方本部への分割支給に反対し、これまで通り中央本部を通じて一括支給を求める②管轄の地方公館に2月10日前後に出すよう求められていた事業計画書の提出は保留する、などを決議。この決議を受け入れてもらうため、陳情団を本国に派遣することも決定した。

 しかし、駐日韓国大使館は1月31日付けで「政府補助金の変更はすでに国務総理にも報告して決定した事案であり、陳情団の訪問は受け入れられない」と通達していた。

 さらに、団長会議での羅鍾一大使のメッセージを通して、「民団が補助金使用の透明性と効率性、ひいては財政自立度を高めることを期待する」と述べ、政府方針に変更がないことを示唆した。

 この地方への一部直接支給は、すでに1月12日に駐日韓国大使館から民団中央本部に正式に伝えられている。

 そこで明らかになった支給方法は、2007年度については、中央対地方の配分をこれまでの50対50から40対60に変更するとともに、地方分のうち20%を各地の総領事館から民団地方本部へ直接支給するというもの。

 さらに2008年度については、中央30%、地方70%とし、地方への直接支給を30%とする。2009年度は2年間の状況を見て再検討、というものだ。

 これに対して民団中央は、「組織運営の統一性を阻害する」として反対を表明していた。民団以外の団体にも支給可能との話が一部地方の通達で出ていることに、警戒心を高めている側面もあるようだ。

 団長会議では従来通りの支給方式を求めることで満場一致の採決となったが、近畿地方協議会(大阪府・京都府・兵庫県・和歌山県・奈良県・滋賀県)が、「中央本部は監査結果の指摘を厳粛に受け止め透明性ある執行方針を立ててほしい」との但し書きをつけたり、「分割支給でどんな問題が起きるのか」と疑問を呈する地方幹部も出た。

 民団中央は、2月末までに提出を求められていた組織自立に向けた事業計画書なども期限延期を求めており、推移が注目される。

■解説 組織の在り方を含め根本的に見直しを■

 この間、いくつかの謎が浮かび上がっている。昨年8月末の政府監査(2003年度から3年間)で、虚偽報告などの問題点が指摘され、韓国の国会でも追及されている。これについて民団の対応はやや鈍い。

 第1に、虚偽報告(在外同胞財団の2005年度特別支援補助金のうち2079万円の未執行金を全額執行したと報告)を指摘された問題で、当時の最高責任者である金宰淑・元団長と会計担当責任者の具文浩・元副団長への事情聴取と処分を行う方針が発表された。

 これについては民団側は、「そう言われても仕方がない部分がある」として、全額を韓国政府に返済しているが、事情聴取の結果、また処分について、いまだ正式な報告が民団からなされていない。虚偽報告の真相はどこにあるのか。

 第2に、「会計処理が不透明」と指摘された特別事業資金4172万円について、韓国政府には経過を説明したとの報告が団長会議でなされたが、監査報告はまだ内部調査中とのことだった。

 問題発覚から数カ月も経っているのに、民団の内部調査結果が明らかにされないことに、「民団中央の認識と一般団員には大きな温度差がある。このままでは一般団員の信頼を得られない」と危機意識を見せる地方幹部は多い。

 さらに、「政府補助金のほかに特別事業支援金という制度があるなど知らなかった。どういう会計になっているのか、詳細に説明してほしい」との声も聞かれた。

 第3に、昨年効率的に使用されず返納されたという1億5000万円についても、納得できない部分が多い。創団60周年事業、地方参政権獲得運動で使用予定が組織内の混乱で運動を行えなかった、また民団新聞の発行部数を減らしたこともあり残った金額とのことだが、あまりにも多額だ。「未執行金が1億5000万円など、ふつうの会社運営では考えられない。どういう予算配分、事業計画を立てているのか、さらに補助金が30年近くの間、どう使われてきたのか明らかにすべきでは」と不快感を示す団員もいる。

 この1億5000万円については、「民団が同胞社会に貢献できるような特別な事業、例えば老人ホームなど同胞が長期間使用できる公用施設事業」に使用するなら渡すとの方針が韓国政府から打ち出されている。

 今回、問題点として浮かび上がったのは、補助金の使途と活用法である。現在の焦点は配分方式になっているが、そもそも民団は補助金なしには成立できない団体なのだろうか。

 「この際、創団精神に戻って補助金を返上して自立運営をしよう」の声もあがっている。根本的に見つめ直す必要がありそうだ。