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2014/11/07

<在日社会>国立ハンセン病資料館「この人たちに光を」展

  • 国立ハンセン病資料館「この人たちに光を」展①

                     趙 根在さん

  • 国立ハンセン病資料館「この人たちに光を」展②

    「病棟を訪ねて」1961年

 ハンセン病患者の歴史と苦闘を伝える国立ハンセン病資料館企画展「この人たちに光を―写真家 趙 根在が伝えた入所者の姿―」が、国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)で、16日から来年5月31日まで開催される。

 趙根在(1933~97年)は愛知県生まれ。生家は貧しく15歳で中学校を退学し、家計を支えるため岐阜県内の亜炭鉱山に働きに出た。以後数年間、事故と隣り合わせの危険な炭鉱労働に従事したが、やがて「地底の暗闇」で迎える死の予感に耐えられなくなり、「地上へ、光への脱出願望」を募らせていった。この時の辛く苦しい体験が、後にハンセン病療養所の入所者に対する深い共感へつながった。

 61年、初めて国立療養所多磨全生園を訪れた。そこで在日の入所者に出会い、「ここの人はかつて私が地底で体験したような出口のない闇のなかに閉じ込められている」と強い衝撃を受けた。そして、その闇から脱け出したいという入所者の切なる願いを、社会に伝えることこそ自分の使命だと確信し、初めてカメラを手にした。入所者と療養所を写すためのカメラマンの誕生だった。

 趙は以後、20年以上にわたって全国の療養所10 カ所に通い、入所者と寝食を共にしながら撮り続けた写真は2万点にも及んだ。趙の写真は、体の不自由な夫にヤカンで水を飲ませる妻の姿や、亡くなった入所者の葬送、患者運動など、そこに生きる人々とその生き様を鮮明に写し取っている。それらは入所者との強い信頼関係がなければ撮影できなかった場面の数々だ。さらに火葬場、監禁室などを写し、それらが存在していた当時の療養所の特異性を伝えている。


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