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2009/07/31

<トピックス>国会で「メディア関連法」改正案が成立

  • 国会で「メディア関連法」改正案が成立

    法改正により大企業や新聞社が放送事業に参入する道が開かれた(MBC)

 新聞社や大企業による放送事業への参入を認める「メディア関連法」改正案が、韓国国会で成立した。一定の制限付きではあるが、地上波放送やケーブルテレビ、衛星放送などに異業種や外資が参入し、さまざまなコンテンツを制作、提供する道が開けた。今後、米タイム・ワーナーのようなグローバルメディア企業が、韓国で誕生する可能性も出てきた。

 与党ハンナラ党が単独で可決したのは、「新聞などの自由と機能保障に関する法」(新聞法)、「放送法」、「インターネットマルチメディア放送事業法」など3法の改正案だ。改正法の骨子は、資産が10兆ウォン以上の大企業と新聞社に放送事業の株式所有と放送界への参入を認めるというもの。持ち株比率の上限については法案審議で修正が重ねられ、最終的に地上波放送が10%、ケーブルテレビや衛星放送で有料で放送されている「総合編成チャンネル」と「報道専門チャンネル」がそれぞれ30%に定められた。

 地上波放送の兼営は2013年から認められるが、大企業と新聞社が地上波放送局の株主として経営権を握ることの意味は大きい。同年には地上波デジタル放送が開始されるので、KBS、MBC、SBSに続く第4の地上波放送局や、世界的なケーブル放送である米CNNのような24時間放送の報道専門チャンネルの誕生も夢ではない。

 韓国では1980年、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権のもと、放送と新聞社が強制的に統廃合され、他業種のテレビ放送への参入が規制された。それだけに、今回の法改正で29年ぶりに韓国メディア界が新しい時代(メディア・ビッグバン)を迎えることになったと評価する声もある。

 政府・与党がメディア法の改正を推進した背景には、国内メディア業界のグローバル化を進めたいという狙いがある。世界的なケーブル放送のCNNを保有するタイム・ワーナーなどは、世界中で買収・合併(M&A)を繰り返し、新聞やテレビ、映画、音楽などのジャンルを独占する巨大メディアに成長した。英ボーダフォンや日本のNTTドコモなども、ニュースや、ゲーム、エンターテインメント分野にまでビジネス領域を拡大している。

 韓国でも既成のメディアが発達し、「冬のソナタ」や「宮廷女官チャングムの誓い」などの人気コンテンツを開発する能力を持っている。世界トップレベルの情報通信産業基盤も確立している。今後は、放送通信融合技術に基礎を置くサービスモデルの確立と、世界に通用するコンテンツ事業の育成が早急の課題だ。

 現状では、放送事業への参入を望む新聞社や大企業の1社当たり持ち株比率が10~30%と低く抑えられたため、大企業同士やその他のメディア、外資企業などとコンソーシアムを組んで参入を図る必要がある。特に地上波放送は数兆ウォン台の保有財産が必要とされており、1社当たり数千億ウォンの余裕資金がなければ参入は不可能だ。資産規模上位30社はもちろん、サムスンなど4大企業グループも現時点では、「地上波放送進出に関心がない」と表明するなど、慎重姿勢を崩していない。

 このため地上波放送よりも規制が比較的緩く、最低2000億ウォンの資本金で設立できる総合編成チャンネルや報道専門チャンネルに参入する企業や新聞社が増えると予想されている。これに関連し、崔時仲(チェ・ジジュン)・放送通信委員長は「KTなど3社が競合する通信業界のように、放送業界も3社が善意の競争をする体制が望ましい」と述べ、総合編成チャンネルと報道専門チャンネルへの参入枠をそれぞれ3社まで広げる案を示している。

 情報通信政策研究院(KISDI)によると、今回の法改正で放送市場は2007年の9兆9803億ウォンから9000億ウォン以上拡大する見込み。関連市場も含めると、韓国全体で、1兆7000億ウォンの生産誘発効果、1万3000人の就業誘発効果が期待される。

 また、今回の法改正は、現政権寄りといわれる大手新聞3社(朝鮮、中央、東亜)による地上波放送局の支配を許容する狙いがあるとして、民主党などの野党が反発、採決を阻止しようとして与党議員と衝突した。放送法の採決過程では、採決を2度行うハプニングや代理投票疑惑もあり、野党側は「採決無効」を主張し、憲法裁判所に効力停止仮処分を申し立てるなど、適法性論議が起きている。昨年12月から8カ月間続いてきたメディア法をめぐる与野党間の対立は尾を引いており、今後の政局に暗雲を投げかけている。


◆来年上期に開局へ

 メディア法改正案の成立を受け、政府の担当部署である放送通信員会は、10月末までに施行令の改正などを行い、11月から事業者選定作業に入る予定だ。早ければ、来年上半期中にケーブルテレビや衛星放送で視聴できる「総合編成チャンネル」や「報道専門チャンネル」が新しく開局する。

 施行令には、大手新聞社の参入規制に関わる内容として、▼新聞の世帯購読率の算定基準▼メディア多様性委員会の構成と運営▼新聞購読率の視聴占有率(シェア)換算方法などが盛り込まれる。新聞社に対しては世帯購読率が20%を超える場合は参入できないとする参入規制が設けられたが、現在、この規制に抵触する新聞社は皆無だ。今後、資金など条件さえそろえば地上波に参入する可能性もあるが、現時点では、地上波放送よりも「総合編成チャンネル」への参入に関心を示している新聞社が多いようだ。

 総合編成チャンネルは、報道や娯楽、教養番組を提供するという点で、地上波放送と内容において差がない。有料ではあるが、全国世帯の90%ほどがケーブルテレビなどで地上波放送を視聴しており、視聴率競争の点でも地上波に十分対抗できる。CJグループ、ロッテグループ、現代百貨店など、テレビショッピングに参入している企業と新聞社の間で合従連衡を模索する動きもある。

 なかでもCJは、元々関係の深いサムスングループやその傘下である中央日報などと共同で株式を取得する案を検討しているとされる。中央日報が保有するケーブル放送の「QTV」も、タイムワーナー・グループの子会社と提携している。

 経済専門チャンネル「MBN」を運営している毎日経済新聞も、報道以外に娯楽や教養番組を制作、放送する「総合編成チャンネル」への転換を検討している。昨年12月から「東亜ニューステーション」というインターネット放送を始めている東亜日報も、「総合編成チャンネル」参入のための準備を進めている。朝鮮日報も来年から導入される多チャンネル放送(MMS)に関心を持っている。