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2001/07/13

<総合>アジア人初のIOC会長誕生か

 アジア人初のIOC(国際オリンピック委員会)会長が誕生するか――。13日からモスクワで始まる第112回IOC総会最終日の16日に行われる投票の行方に関心が集まっている。現在5人の候補の争いとなっているが、最終的には金龍雲理事(韓国体育協会会長)とジャック・ロゲ理事(ベルギー)の一騎打ちになり、アジア対欧州の戦いとなりそうだ。すでに現地に乗り込んでいる金理事は、「スポーツ途上国が多い第3世界を支援しなければならない」と精力的な活動を展開しているが、13日午後11時ごろに決まると見られる2008年夏季五輪開催地に最有力の北京に決まれば金氏に不利との説も出ており、予断は許されない。

 5人の候補は金龍雲理事、ロゲ理事のほか、ディック・バウンド前副会長(カナダ)、パル・シュミット元副会長(ハンガリー)、アニタ・デフランツ副会長(米国)で、有色人種として初めて金理事と黒人女性のデフランツ副会長が会長職に挑戦する。1894年のIOC創設以来、現職のサマランチ会長までの7人の会長はすべて白人で占められていた。そのうち6人が欧州出身だ。

 金理事は、「もう白人独占の時代ではない」と強調、アジア、アフリカ、南米を中心に支持をとりつけている。特に、サマランチ会長の商業主義に真っ向から反旗を翻し、「五輪は過度の商業主義や薬物問題で、存在の基礎が崩れかけている。理念を再び高く掲げ、IOCがイベントのブローカーになり下がるのを防ぐべきだ」と力説している。

 ロゲ氏とパウンド氏が有力な対抗馬になっているが、人気が今ひとつのパウンド氏は最終的に脱落、ロゲ氏と大接戦を展開するだろうと現地の関係者らの分析だ。そこで2008五輪開催地だどの都市になるかで会長戦にも大きな影響があるとみられている。

 候補地は5都市。北京が最有力で、パリとトロントがその後を追い、大阪とイスタンブールは大きく引き離されている。特に北京は2000年大会でシドニーにわずか2票差で敗れたこともあり、同情票も期待でき有利に活動を展開していが、北京の決まればIOC会長に金龍雲理事が選ばれるのは困難との見方が出てきた。同じアジアに連勝させるのはまずいと判断、欧州が結束してロゲ氏支持に回るとみられるからだ。だが、金理事はこれに対して「むしろ有利になる。北京と私と支持勢力が共通分母をもっているからだ」と強気だ。

 会長戦で投票するIOC委員は計122人で79カ国から選ばれている。そのうち欧州が半数に近い57人を占める。金理事はアジア(21人)、アフリカ(15人)では圧倒的な支持基盤があるが、欧州を切り崩すのは容易でない。結局、米州地域の24票をどこまで取り込めるかのかが最大のポイントだ。この点で、米候補が決選投票前に脱落すれば米国が金理事を支援する側に回っているの強みだ。関係者によると、ブッシュ大統領はすでに早くから金理事支援を決めているという。

 IOC会長の任期は8年で、4年の重任が可能だ。「世界スポーツの大統領」と呼ばれる会長職だけに、初のアジア地域からの選出を期待する声は大きく、現地でも話題になっている。