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2002/03/22

<総合>W杯特別インタビュー 高円宮憲仁親王殿下

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    日本人と韓国人との間には多くの共通点があると語る高円宮殿下(左)。右は朴恵美・本紙社長(高円宮邸で)

 韓日が共催するサッカーのワールドカップ(W杯)を70日後に控え、5月31日行われるソウルでの開会式に皇族の高円宮憲仁親王殿下が出席されることがほぼ確定した。韓国政府の正式招待により皇族が訪韓するのは戦後初めてのことであり、関心を呼んでいる。高円宮殿下に訪韓に寄せる期待、W杯の意義などについて語っていただいた。(第三回 聞き手:本紙・朴恵美社長)


   ◆大会自体の成功は確信

 朴社長 韓日W杯は必ず成功させなければなりませんが、W杯成功の意味をどう捉えたら良いでしょう。

 高円宮殿下 W杯を運営すること自体大変なことです。ものすごくたくさんの人がみえるわけですし、会場だけでも、キャンプ地まで合わせると日韓で30以上になります。しかし、両国の国民性、あるいは両国が過去に行ったさまざまなイベントの実績を見れば、大会そのものが立派に運営されることは、疑いようもないことです。

 それはもちろん成功でしょうが、21世紀における日本と韓国の新しい関係の最初の一歩を踏み出せれば、それが本当の意味でのW杯の成功であり最大の目標だと思います。


 朴社長 最初の一歩というのはどういう意味でしょうか。

 高円宮殿下 一緒にやっていくということです。それは日韓2カ国だけの関係にとどまらず、アジア、場合によっては環太平洋を含めて考えても良いと思います。日本と韓国が、そういう地域で果たすべき役割というのは、小さくないと思うのですね。一緒に努力することが増えていけば、それが立派な最初の一歩だと思います。
それとともに、なんといっても大事なのは民間交流。W杯が終わってまたもとの状態に戻るのではなく、これを契機に民間交流が増え続けていく、そういう路線がここで確立すれば、私はそれが成功だと思うのですよ。


   ◆文化の根っ子に共通点

 朴社長 ところで、今回が初訪韓になりますが、韓国に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。

 高円宮殿下 私が体験的に知っている韓国というのは、やはり芸術を通してです。音楽、舞踊、歌謡、あるいはお芝居。実際に韓国の地を踏んで、いままでのイメージに、どういうものが付け加わるのか楽しみです。

 なにせ、本来お隣の国ですし、いろいろな文化が日本に伝わっていますね。例えば、韓国語というのは日本語に一番近い言語ですし、共通要素というのはたくさんあると思います。ただ、いままでお互いに触れ合うチャンスが少なかったのです。私はまず、同じ要素がこんなにたくさんあるということを確認しに行きたい、そういう気持ちでいるのですよ。

 趙容弼さんとか、韓国の人たちが歌っている歌がありますね。日本人で歌っている人もたくさん私は知っています。それをみていると、日本も韓国も、なにか物悲しい、ちょっとマイナーなのが好きですね。国民性もあるのでしょうが、東洋人に共通している根っこ、文化の根っことか民族の根っことか、共通点は多いのじゃないかと思います。交流がまだまだ少ないから、多くの人たちがそれを実感していないだけだと思います。


   ◆在日同胞の支援も必要

 朴社長 いま根っこという話がありましたが、天皇陛下の「縁(ゆかり)の発言」がありました。韓国では非常に評価されましたが。

 高円宮殿下 宮中には雅楽というものがあります。それをずっと昔から司っている家がありますが、苗字は明らかに大陸系、半島系です。地名なども、西日本や日本海側には半島系の名前が残っているわけです。明らかにたくさんの人が渡ってきて、こちらに住みついている。ですから、同根というのか、そういうものはあったわけですよね。ただ途中で、半分断絶みたいなことになっていた。それを解き放つのが、われわれの世代の義務じゃないかと思うわけですよ。実際、日本にもたくさんの韓国の方が暮らしていらっしゃるわけで、その方たちの支援もわれわれは必要としています。

 このワールドカップを無駄にしてはいけない。私の思いはそれに尽きます。いままで日韓の橋渡しのために努力してくださった方々はたくさんいらっしゃいますが、それは必ずしも全国的な運動にはなってなかった。これ(W杯)はもう本当に全国的なものです。ですからこれが起爆剤になって、21世紀にわれわれ両国民が動いて行くべき方向を、見つけ出すきっかけになって欲しいと思います。


   ◆人の交流が一番の資源

 朴社長 最後に、日本と韓国の交流のあり方について、どうお考えでしょうか。

 高円宮殿下 繰り返しになりますが、草の根の交流が増えていくことが望ましいと思います。それと、やはり人の交流が大事ですね。いくら音楽を聞いたり、踊りを見たとしても、人と人との交流がないと本当の意味での交流にはなりません。

 例えば韓国から舞踊団が来る、あるいは日本から太鼓のグループが韓国に行く。その人たちがやることは韓国舞踊だし、日本の太鼓演奏かもしれないけれど、実際にその人たちはそこへ行って、韓国の人たちと接するわけですね。音楽で人々に感動を与えることプラス、地元の人たちとの交流がそこでできる。そういう人と人とのコンタクト、接触点というものを、とにかく増やさないといけないと思うのです。

 観光旅行でもいいし、留学でもいい。さまざまな分野で、さまざまのレベルの人たちが行き来をすることです。行き来をしようと思ったらこんなに簡単な国はない。泳いで行くのはちょっと難しいけど(笑い)、福岡まで行けばすぐ船が出ているし、飛行機でも1時間と少しですから。人と人との交流が、両国の絆を深めていく一番の資源だと思います。

 朴社長 長い時間、ありがとうございました。