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2003/09/12

<総合>農業は保守、工業は開放 ジレンマの韓国

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 世界貿易のルールを決める第5回WTO(世界貿易機関)閣僚会議がメキシコの保養地、カンクンで10日から始まった。14日までの5日間、農業、工業製品の関税引き下げなどをめぐって先進国と途上国間で激しい論戦が予想される。韓国にとって今会議は農業開放の分水嶺であるだけに許祥萬・農林水産部長官、黄斗淵・外交通商部通商交渉本部長を共同団長とする60人の大型代表団を送り込み、農産物市場開放で途上国待遇を受けられるよう必死の外交交渉を展開している。

 ユカタン半島東端にある世界的な保養地、カンクンには世界146カ国から1万余人の政府代表団や取材記者、グローバル化に反対する1万5000人に達するNGO(非政府機関)関係者らが集まりごったがえしている。

 今会議は、2001年のカタール・ドーハ会議で決めた新ラウンド(多角的貿易交渉)の交渉課題を中間決算し、交渉時限である2004年末までに結論を出すための大きな試金石と位置付けられている。交渉テーマは①農業開放②非農業(工業製品、水産物、林産物)開放③サービス貿易の取り決め④反ダンピング、補助金などの規範確立⑤環境保護をめぐる紛争解決⑥知的財産権の確立⑦外国人投資などの国際的基準づくりをめざすシンガポール問題--の7つだ。

 これらの各テーマ別に基本的なフレームの合意を導き出し、14日に閣僚会議宣言文を発表することを目標としているが、市場開放をめぐる先進国、途上国間の対立は激しく、また先進国間でも分野別で見解差が埋まらないなど楽観はできない情勢だ。

 韓国は農業問題が最大の争点であり、コメなどの農産物で途上国待遇が得られるようにすることを第1目標に掲げている。農林部関係者は、「カンクン会議ではまず農業市場開放が途上国に有利に妥結するように全力を入れる。その後の交渉で韓国が途上国待遇を再び得られるよう関係国を説得する」と語った。

 一方の工業製品分野は韓国の開放度が93%に達しており、通信、海運、流通など国際競争力がある分野では海外進出の基盤確保のため市場開放を要求する立場にある。だが、農業分野で開放幅の抑制を主張し、非工業分野では開放を主張するところに韓国のジレンマがあり、各国の共感を得るためには相当の交渉力が求められそうだ。

 今回は会議自体が決裂するとの予想もあり、「IMFや世界銀行の代表が参加していないのはその表れだ」とする現地報道もある。だが、会議の決裂は世界貿易秩序にとって望ましいものではない。特に韓国にとって、地域協定であるFTA(自由貿易協定)締結がすすんでいないだけに、WTOの新ラウンドが失敗すれば、すべての通商紛争を各国との個別交渉で解決しなければならなくなる。

 自国の主張はするが決裂しないように妥協を図る--これが韓国の基本戦略であるが、各国の利害が錯綜した世界最大の貿易会議だけに自国利益にのみ汲々とすることはできない。特に、先進国側は途上国側により多くの配慮をすることが問われている。