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2011/11/18

<総合>韓米FTA批准が正念場

  • 韓米FTA批准が正念場

    韓米FTA批准案の国会処理の議論に先立って、朴熺太国会議長(左から4人目)、与野党代表らと記念撮影する李明博大統領(左から3人目)

 与野党の対立で国会審議がストップしている韓米FTA批准問題が正念場を迎えている。24日の国会本会議でも批准されなければ、来年初の発効は絶望的で、国際的な威信も失墜する。局面を打開するため、李明博大統領は15日に国会を訪れ、朴熺太(パク・ヒテ)・国会議長をはじめ与野党指導部と面談し、韓米FTAの早期批准を求めた。最大野党・民主党などが削除を強く主張しているISD(国家・投資家間の訴訟制度)について、FTA発効後、3カ月以内に米国に再交渉を申し入れると妥協案も提案した。だが、民主党は16日、批准前の再交渉を要求、大統領提案を事実上拒否した。これにより、与党・ハンナラ党は強行採決に踏み切る可能性も出てきた。

 李大統領は、今回の国会訪問で「世界は予測がつかない状況だ。韓国が険しい道を突き進むには国民と政党・政府が力を合わせなければならない」と韓米FTA批准案の早期処理を訴えた。韓国で大統領が国会を訪問し、協力を要請するのは異例。それだけ、韓米FTAを重視していることを示した。

 国会批准が遅れているのは、韓米FTAで採択しているISDに対して野党が強く反対しているからだ。ISDは、投資家が投資国の裁判所ではなく、第3の仲裁機関で紛争を解決できる制度。すでに世界の2500の国際協定で採択されており、企業の海外投資が多い韓国にとっては有利な面もある。

 だが、ISDに対する不安論が潜在し、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長も意見書を政府に提出し、「韓米FTA発効後に米国企業が韓国市場に進出し、損害を被った場合、政府と地方自治体を相手取り国際仲裁機関に提訴できるようになる。市と市民に負担を与えかねない」とISD再検討を求めていた。

 李大統領は今回、このISD問題について批准後の再交渉を初めて提案したが、米政府もこれを受けて、FTA発効後にこの問題を協議できるとの反応をした。米政府が「ISDを協議できる」との考えを迅速に示したのは、早期発効を願う米国の立場が反映されたものとみられる。

 すでに、金宗壎(キム・ジョンフン)・通商交渉本部長とカーク・米通商代表部代表の間で「韓米FTAサービス・投資委員会」の設立に合意。同委でISDを含めサービス・投資分野のどんな懸案についても協議できるとしている。

 だが、大統領提案を協議した民主党は16日、批准前の再交渉実施を要求する方針を再確認した。同党の李庸燮(イ・ヨンソプ)・報道官は「投資家が投資国の裁判所ではなく、第3の仲裁機関で紛争を解決できるISD問題は、あくまでも批准前に米国と交渉すべきだ」と主張。韓米両国の通商関係高官がISDについて再交渉するという内容の合意文書を取り交わすよう求めた。民主党内の穏健派は、来年の総選挙も意識せざるを得ず、結局強硬派に屈する形になった。

 これに対して、与党・ナンナラ党の金起炫(キム・ギヒョン)報道官は、「民主党が合意文書を要求することは、国民が選んだ大統領に対する無礼を通り越して侮辱するものだ」と激しく非難。党執行部も批准案の単独処理に動き出しており、来週半ばまでに与野党が合意点を見いだせなければ、国会での物理的衝突も避けられない状況になってきた。

 韓米FTAはすでに米国側の批准が終わっており、韓国側の批准待ちになっている。李大統領は「国家の生存戦略の一つ」だと強い決意で臨んでいる。朴宰完(パク・チェワン)・企画財政部長官も「韓国の通商国家としてのイメージに甚大な打撃を与える」と懸念している。貿易依存度が高い韓国経済の構造上、対外開放策のFTAは国家戦略でもある。従って、FTAそのものを反対するのは少数派であり、大統領提案を拒否したことに世論もやや批判的だ。

 崔晳泳(チェ・ソクヨン)・外交通商部FTA交渉代表は、「韓米FTAの発効が1年遅れれば年間15兆ウォンの損失が発生する。韓国が推進してきた対外開放政策の一貫性、信頼性の問題が生じる」とし、早期批准の必要性を強調した。また、日本のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加方針について「日本が韓国より先に米市場にアプローチすれば、韓米FTAで得られる利益がなくなるリスクもある」と指摘した。ただ、TPP参加は農業、水産業分野で相当水準の開放を要求しており、韓国は慎重なアプローチが必要だとしている。