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2012/01/20

<総合>韓国経済出足不調・輸出鈍り貿易赤字に

  • 韓国経済出足不調・輸出鈍り貿易赤字に

    年初から輸出は鈍化し、1~10日では貿易収支は26億㌦の赤字になった

 年初から韓国経済に暗雲が立ち込めている。輸出が急激に鈍化し、10日現在で前年実績を下回った。生産や出荷、消費も減少し、在庫が増加する典型的な景気減速の兆しが表れている。ユーロ圏(17カ国)主要国の信用格付け引き下げで欧州債務危機が悪化しており、イラン情勢の緊迫化で原油高騰も懸念される。政府は、今年の経済成長率を3・7%と予測しているが、これら悪材料が実体経済に波及すれば、第1四半期(1~3月)はマイナス成長に陥る可能性も出てきた。

 洪錫禹(ホン・ソグ)・知識経済部長官は17日、大統領府(青瓦台)での閣議で、「1月に貿易収支が赤字になる可能性があるなど、輸出見通しが良くない」と報告した。赤字となれば、2010年1月(8億100万㌦の赤字)以来23カ月ぶりのことだ。

 関税庁によると、1月1~10日の輸出実績は118億㌦で、輸入は144億㌦を記録。貿易収支は26億㌦の赤字だ。

 欧州が最大市場である造船、太陽電池などの分野で輸出が鈍ったほか、中国やインドなど韓国の輸出を牽引した新興国経済も悪化し、輸出見通しを暗くしている。知識経済部は「1月は旧正月(23日)があり、操業日数も少ないので輸出増大は期待できない状況だ」と見ている。

 韓国の輸出総額に占めるEUの比率は10%。ユーロ圏の信用格付け引き下げは、ただでさえ冷え切っている欧州経済に大きな打撃を与え、金融市場の不安で消費心理が萎縮することになれば、欧州への依存が高い電子などでの輸出現場に赤信号が灯ることになる。

 輸出業界は、欧州危機の高まりによる先進諸国の需要減少や為替相場の変動性拡大で、貿易が萎縮することを最も懸念している。このような状況のため、韓国貿易協会は「今年の輸出目標6000億㌦の達成は容易ではない」と見ている。

 李明博大統領も閣議で「欧州の経済状況が当初の予想より悪くなると見られる。わが国経済に与える影響は短期的には限定的とみられるが、対策を講じなければならない」と指示した。

 また、米国政府のイラン産原油輸入削減要求も相当な重荷だ。原油価格が急激に上昇したら、原油輸入比重が非常に高い韓国は、輸入額の急増に加え、輸出競争力も下落し、貿易収支が悪化する。 政府は、今年の年間貿易黒字見通しを昨年の321億㌦に比べ22%減の250億㌦へと下方修正するなど本格的な対策に乗り出した。

 また、イラン情勢がホルムズ海峡封鎖へと繋がることになれば、単にイラン産原油が輸入できないレベルを超え、スタグフレーション(不況とインフレの同時進行)を懸念しなければならなくなる。原油価格の上昇と世界経済の不安によるウォン安が重なれば、韓国経済に及ぼす悪影響は一段と深刻なものになりかねない。

 金利政策も制約を受けている。世界景気の減速懸念が高まっているにもかかわらず、物価安定を図る必要のため、韓国銀行の金融通貨委員会は1月も、政策金利を年3・25%に据え置いた。7カ月連続の金利凍結だ。

 全国経済人連合会は「輸出減を補ってくれる民間消費や設備投資、建設投資などが期待ほど回復していない。第1四半期のGDP(国内総生産)成長率は前期比0%ないしマイナスになる可能性が排除できない」と厳しくみている。