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2011/07/08

<オピニオン>ハリー金の韓国産業ウォッチ⑱次世代成長分野での韓日協力に期待して                                                  ディスプレイバンク日本事務所 金 桂煥 代表

  • ディスプレイバンク日本事務所 金 桂煥 代表

    キム・ゲファン(英語名ハリー・キム) 1967年ソウル生まれ。94年漢陽大学卒業後、マーケティング系企業に入社。2004年来日し、エレクトロニクス産業のアナリストとして活動。09年からディスプレイバンク日本事務所代表。

◆互いの特徴認め融合方法の模索を◆

 KITIA(韓国部品素材投資機関協議会)主催の「韓日 次世代成長分野協力カンファレンス」が5、6日の2日間、都内で開かれた。韓国の新成長産業である2次電池、太陽電池、LED(発光ダイオード)産業の動向と展望をテーマにし、8つのセミナーが開催。日本の部品素材関連企業約200社が参加する中、韓国の関連技術企業及び日本企業の投資を希望する韓国地方自治体について紹介された。

 韓国は次世代成長分野を中心とした経済成長戦略を樹立し、政府や大企業が該当市場に対して積極的な投資と研究活動を展開している。しかし、特定国家と企業がこの分野で完結的に技術の優位性を確保することは、限界がある。国家間、企業間の戦略的提携と連帯を切実に必要とする状況だ。このような成長戦略を背景にし、日本の部品素材企業に対して韓国進出が積極的に提案された。

 最近、日本企業の直接対韓投資は顕著に増加している。とりわけ地理的に日本に近く、亀尾など大規模な産業団地を保有する慶尚北道の場合、ここ5年間に誘致した海外企業の投資額は計3兆6870億ウォン。このうち日系企業の投資額は2兆5000億ウォンで、68%を占める。慶北道庁によると、同地域への投資相談を要請する日本企業はますます増えているという。

 4月に住友化学はサムスンLEDとの合弁で、大邱にLED用サファイア基板工場を建設すると発表。最近の投資ニュースでは、炭素繊維分野で世界1位の東レグループが1兆3000億ウォンを投資し、亀尾で炭素繊維生産ラインを増設及びIT(情報技術)用素材事業に進出するという。これには、東レの韓国法人である東レ尖端素材がパートナーとして参加する。慶北地域には、韓国の主要企業が密集している。日本の部品素材関連企業の投資が同地域で拡大すれば、対日貿易赤字も減る。間接的な国産化効果もあり、長期的には先進技術の吸収も可能だろう。

 慶尚北道のほかにも、京畿道、忠清南道、全羅北道、釜山地域など主要工業クラスターの密集地域には外国人投資地域、自由経済地域、部品素材専用工業団地などが出来ている。これら地域に進出する日本の部品素材企業にとっては、安い賃借料や税制のほかにも、豊富な人的資源と需要企業など多様かつ実質的なメリットがある。これまで進出した日本企業は、主要企業と近距離にあるため迅速に対応できるというメリットを上手く活用しており、共同投資も活発に行っているという。

 このような成果にもかかわらず、いまだ多くの日本企業は韓国進出を躊躇している。最も大きな理由は、技術流出だ。膨大な投資と長い開発期間のなかで確保した技術を韓国企業に露出すれば、複製される可能性が高いという一種の被害意識だ。

 韓国の電子産業の歴史は50年程度と短い。だが、世界最大の半導体・LCD生産国であり、テレビや携帯電話など電子製品の販売数量でも世界トップだ。

 このような急成長に対しては日本技術の追随とともに、類似技術の開発や模倣さえもあったと考える日本企業がある。このような認識が底辺にあるならば、韓国に対する直接投資を迷うことも理解できる。

 日本の製造業は独自技術を開発、持続的に革新し、コスト削減と差別化を遂げてきた。そのため日本ではグローバル展開に際し、しばしばブラックボックスという表現を使いながら核心技術の保護戦略について話す。核心技術を保護しつつ、前後の生産工程、事業展開を他国の企業に任せ、国際分業化の流れに乗るということだ。対韓投資ではブラックボックス化のレベルを非常に厳格にする必要があり、できれば他国を優先に考えざるを得ないのかも知れない。

 だが、既存技術に執着すれば、新しい技術と市場のチャンスを逃すこともある。ブラックボックスに内在する付加価値生成の力は封じ込められるかも知れない。巨大な国際分業化の流れと方法論に対する議論はさておき、直ちに隣国の資源を効果的に活用・結合し、競争力を確保しようという素朴な提案をしたい。日本の技術と韓国の技術の間には、明らかに何らかの差があるだろう。歳月、経験の差はあるだろう。しかし、双方が抱える課題をともに解決できるかも知れない。

 韓国経済の次世代成長産業である次世代ディスプレー、LED、太陽電池、二次電池などは、韓国だけの次世代産業ではないだろう。世界の電子産業をリードしている日本と韓国がともに成長できる方法はないだろうか。先導的技術を持つ日本、市場受容性の高い技術を駆使する韓国が互いの技術に関する長所と短所を認め、融合の方法を見出し、より多くの付加価値を作れるのではないだろうか。韓国に対する投資を躊躇している日本の技術企業に問いたい。


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