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2013/02/01

<オピニオン>深読み韓国経済分析 第1回 ウォン高に負けない韓国経済へ                                                      リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

  • リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

    イ・ジュンスン 1968年韓国京畿道生まれ。90年渡日し、96年東洋大学経営学部卒業。96年現代証券入社、97年から現代証券東京支店駐在、07年韓国投資証券を経て09年リーディング証券入社、10年投資銀行本部長、11年代表取締役専務、12年7月代表取締役社長に就任。

  • 深読み韓国経済分析 第1回 ウォン高に負けない韓国経済へ

◆長期的視点で強い輸出国家へ◆

 最近、韓国の通貨ウォンの上昇傾向が目立つ。特に円に対するウォン相場は、先日(1/18)、100円=1174ウォンと4年3カ月ぶりの高値を記録するなど、対ドルよりもその上昇は著しい。

 昨年末、日本では総選挙という大きな政治イベントをきっかけに円安が進み、金融緩和への期待感などから安倍新政権の発足後もさらにその勢いを増している。

 このようなウォン高・円安は今後も続く可能性が高いとみられており、これにより輸出依存度の高い韓国経済へ及ぼす影響も大きいと懸念されている。

 韓国は輸出額が国内総生産(GDP)の5割以上を占める貿易立国。ここ数年間ウォン安は韓国の輸出産業の競争力を高め、同国の輸出を大きく伸ばしてきた一つの要因であった。

 特に、日本と韓国は自動車、電機などの主要業種において競争が激しいため、円とウォン相場の変動は両国の輸出競争力を大きく左右する。

 このような状況でウォン高・円安は日本企業の経営環境を好転させる一方、韓国企業にとっては業績悪化につながるマイナス要因になりかねない。人口が約5000万人で国内市場が小さい韓国は、今後も輸出は経済の中核として重要な要素となる。

 韓国経済が為替変動に左右されないために必要なものは何か、その体質づくりに求められるものは何かについて考えたい。

 韓国の輸出企業にとって不利に働くウォン高を克服する最も一般的な対策と言われているのが、海外生産拠点の拡大である。

 現代自動車の場合、ウォン高への抵抗力を高めるために海外現地での生産能力を拡大してきた。昨年、同社は中国第3工場やブラジル工場はすでに稼働を開始している。

 ただし、大幅な増産投資が必要となるため、為替変動への対応策としては限界がある。

 政府レベルの対応として注目すべきところは、自由貿易協定(FTA)を積極的に結び、関税の引き下げなどにより自国輸出企業の価格競争力を高めてきた点である。

 韓国は、多数の国や地域とFTAを結んでおり、米国やEUとの協定はすでに発効済みである。昨年、世界的な景気後退にもかかわらず前年度に比べて輸出実績が落ちなかったのは、その効果の表れといえる。

 このような企業と政府の取り組みに加え、今後長期的な観点から韓国経済に求められるのは輸出競争力のある産業分野の拡大だ。

 韓国は日本と基幹産業が重なるため、今まで電機や自動車などの主要製造業において輸出企業が成長、日本企業と激しく競争してきた。今後、輸出の競争力をさらに高め、為替変動にぶれない強い経済体質を作るためには、日本との競合関係にある分野以外の輸出産業の発掘・強化が必要不可欠だと考える。

 例えば、放送・文化・コンテンツ産業分野をはじめ、食料品や化粧品分野などは、韓流ブームを追い風に近年輸出が増えており、輸出産業としての成長分野といえる。政府は多様な分野において潜在力のある企業を積極的に発掘し輸出競争力につながる企業として育成・支援していくべきである。

 韓国は国内市場の限界から貿易産業を強化し輸出を拡大させることで経済を発展させてきた。今は世界8位の貿易国に成長し、その輸出相手先も欧米や日本にとどまらず中国や東南アジア、中東地域など、その舞台はますます広まっている(図表参照)。

 ウォン高の状況下でも世界のより多くの地域で競争力のある存在として生き残るために、より長期的な視点で強い輸出国家を作っていかなければならない。


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