ここから本文です

2013/08/02

<オピニオン>深読み韓国経済分析 第7回 開城工団の早期再開を                                                      リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

  • リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

    イ・ジュンスン 1968年韓国京畿道生まれ。90年渡日し、96年東洋大学経営学部卒業。96年現代証券入社、97年から現代証券東京支店駐在、07年韓国投資証券を経て09年リーディング証券入社、10年投資銀行本部長、11年代表取締役専務、12年7月代表取締役社長に就任。

  • 深読み韓国経済分析 第7回 開城工団の早期再開を 

◆安定した継続的運営めざせ◆

 先週、今年の4月以来稼働が中断している開城工業団地(以下、開城工団)の正常化を巡り、韓国と北朝鮮の間で6回目の実務者協議が開かれた。7月の初旬、当団地の正常化で基本合意に至ったが、その後の協議で稼働中断の再発防止策などに関する両社の意見が折り合えず、6回目の協議も決裂、残念な結果となった。開城工団事業は、休戦状態の中で韓国と北朝鮮が歩み寄り経済的な協力を果たした成功事例であっただけに、今回の決裂で感じるもどかしさは、より大きかった。

 開城工団は、北朝鮮の土地と労働力に韓国の資本と技術力を合わせて創った、北朝鮮の開城市郊外に位置する経済特別地域である。この事業の構想は、2000年6月に平壌を訪問した当時の現代グループ名誉会長だった故鄭周永氏により初めて発表された後、同月開かれた首脳会談で正式に合意され、南北間の歴史的な経済協力事業として大きな注目を集めた。開城工団は、南北が共同で製品を生産することで両者に経済的効果をもたらす空間である以上に、政治や社会、文化の側面において韓半島の平和に寄与する重要な意味を持つ。韓国と北朝鮮にとって開城工団の稼働再開はなぜ必要なのか、また、開城工団が継続的に発展していくために克服すべき課題は何かについて考えたい。

 まず、経済的側面をみると、開城工団は04年に操業を開始して以来、目覚ましい成長を遂げている。統一部の統計資料によると、現在工団には機械、金属、繊維、電機などの業種を中心に123社の企業が操業中である。04年に当工団のモデル団地に入居していた企業がわずか15社であったことを考えれば、今は約8倍に増加した数の企業が経済的効果を生み出しているのである。このような操業企業数の増加に伴い、開城工団の年間生産高は05年の1491万㌦からその2年後は10倍増加の1億8478万㌦を記録、12年は4億6950万㌦にも達していた。

 また、このような開城工団の成長は、高い人件費と人手不足で苦しんでいた韓国の中小企業に北朝鮮の安い労働力を活用することで新たな活路を開き、北朝鮮は年間9000万㌦の外貨収入のほか、5万人を超す雇用の創出、市場原理や先進的経営手法を経験し学ぶ機会など、様々な経済的メリットを得ることを可能とした。ここ約9年間において北朝鮮による核実験や延坪島の砲撃など数多くの事件があったにもかかわらず、長年開城工団事業が中断されなかったのは、この経済的メリットが簡単に手放せないほど魅力的なものであり、工団が中断されれば南北経済への大きな打撃すら予想されていたからである。南北に恩恵をもたらす開城工団の経済的効果は、工団の存在意義において大きい意味を持っており、安定的に維持していくことが不可欠である。

 一方、開城工団は、経済的側面以外に政治や社会、文化的側面においても非常に大きな意味を持つ。まだ、南北間の政治において複雑な考えや感情は残るが、開城工団の中では南北の住民間に存在する文化的・情緒的距離感は縮まりつつある。開城工団は小さい地域であるが、朝鮮半島の平和を花咲かせる最初の拠点として大事な空間なのである。

 開城工団は、様々な側面において南北経済の成長を牽引する大きな原動力を潜んでいる。韓国と北朝鮮がこの可能性を最大限に活かすためには、北朝鮮の非核化をはじめ、開城工団の稼働中断再発防止に向けた細部の対策について綿密な協議を重ね、南北間の政治的な影響にも揺るがない開城工団の運営を確立しなければならない。安定的で継続的な工団の発展に向けて一日も早い開城工団の再開を願う。当時、故鄭周永名誉会長が開城工団を開拓するために1001匹の牛を連れ38度線を越えた彼の切実な思いを、我々は今共有する必要がある。


バックナンバー

<オピニオン>