ここから本文です

2014/08/15

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第19回 アジア・ユーラシアダイナミズム時代を創造する志                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

    キム・ミドク 多摩大学経営情報学部および大学院経営情報学研究科教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所、三井グループ韓国グローバル経営戦略研究委員会委員などを経て現職。

◆最も力強いグローバル競争力に◆

 この連載『韓国企業と日本企業』のコンセプトは、日本企業が、「アジア経済=世界経済の時代」を迎えるにあたって、アジア企業といかに向き合うか。その1つの方法として、アジアを鏡にして日本の等身大の姿を写し出し、身の丈に合ったアジア・グローバル戦略を展開することである。すなわち「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ということだ。言い換えれば今日のアジアを知れば知るほど、これまでとは違う日本の姿がわかるということ。逆に言えばアジアを知らないことは、日本の姿がわからないだけでなく、アジア・ユーラシアダイナミズムや新しい時代から取り残されることになり兼ねないということである。繰り返すが、アジアを知る目的は、アジアを知ること以上に日本自身を知ることだ。

 日本は、これまでの米国一極集中の時代であれば、米国を鏡にして自己認識していれば、世界における立ち位置は「当たらずと雖も遠からず」であったかもしれない。しかし今日の多極化・全員参加型の時代であり、特にアジア・ユーラシアダイナミズムの時代においては、アジアを鏡にして自らの姿を見つめ直し、大きく変わった姿を受け入れることができなければ、世界潮流に逆行することになる。大きく変わった姿とは、日本の世界経済におけるプレゼンスや日本企業のグローバル競争力が低下したということだ。これは、決して自己卑下することでなく、冷静に「己を知る」ということである。「己を知る」ということは、誰もが簡単にできることでなく、相当な学習や自己研鑽が必要であり、高度な能力も求められる。何よりもコンプレックスやジェラシーと真正面から戦い、誤魔化し・見栄・嘘偽りなどをそぎ落とさなければならない。これができれば、見えてくるもの、出会う人、歴史観、世界観が違ってくる。「類は友を呼ぶ」が如く「己を知る」人同士が集まれば、多少価値観が違っても信頼を醸成しやすくなり、仕事やビジネスも捗り易くなる。

 また、「己を知る」過程で育まれる「バランスのとれた自信と謙虚さ」や「深い歴史・世界認識」からアジアについての捉え方や向き合い方も大きく変わってくるであろう。ただ、アジアと向き合うと言っても国の数が広義で48カ国もあり、分野も多岐にわたるので、どの国のどの分野から手を付ければよいのかわからない。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>