ここから本文です

2015/12/11

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第35回 アジア・パラドックスと韓日経済の役割②                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部事業構想学科長および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

  • 韓国企業と日本企業 第35回 アジア・パラドックスと韓日経済の役割②

◆相互の長所生かしシナジー図る連携を◆

 国際関係の緊張と経済関係の拡大という大きな政経矛盾である「アジア・パラドックス」の解消という視点から「韓日経済の役割」を改めて考え直してみる。韓日も政治関係は戦後最悪である一方、経済関係は戦後最高という「アジア・パラドックス」に陥っている。険悪な韓日関係の理由とその背景は、前号で解説した。今号は、密接な韓日経済について見てみる。韓日は、貿易面では日本にとって韓国は第3位の貿易相手国である。一方、韓国にとって日本は第2位の貿易相手国である。また、投資面は、日本企業の対韓国投資額が過去 5年間(2010~14年)で141億㌦(1兆7000億円)に上る。米国(151億㌦)に次いで2番目に多い金額である。ただ12年日本企業の対韓国直接投資は、前年比98%増の45億㌦(4320億円)で史上最高を記録したが、13年は前年対比40・8%減の27億㌦、14年は前年対比7・5%減の25億㌦とリバウンドが起きている。

 最も投資している日本企業は、経団連の歴代会長の会社である。経団連の前会長は住友化学の米倉弘昌会長であり、経団連の現会長は東レの榊原定征会長である。日本企業が韓国に投資する狙いは、①韓国のFTAを活用した輸出拠点化、②韓国市場と中国市場の開拓、③電気料金(日本の4割)と物流費の安さ、④法人税率の低さである。特に韓国のFTAは、魅力的に映るようである。既に45カ国と発効しており、世界人口(70億人)の約4割近い26億人のフリーマーケットを得ている。また、「欧州~アジア~米国を繋ぐ東アジアのFTAハブ」を目指し、韓米、韓EU、韓印に次ぐ大型FTAである韓中FTAの発効も控えている。

 日本企業の対韓国投資は、本格化・大型化しており、世界最大の工場を建設するという事例もある。例えば①11年1月東レは、韓国慶尚北道亀尾市で50億円を投じ、年産2200㌧の炭素繊維工場を建設。生産するのは、パソコン・自動車・風力発電機・天然ガスのタンクなどに使う炭素繊維。さらに、20年までに350億円を投じ、生産量を年間1万4000㌧に増やし、世界最大の炭素繊維工場にする。②11年1月旭化成は、韓国蔚山市で200億円を投じ、年産25万㌧の樹脂原料工場を建設し、韓国の生産能力を合計55万㌧に引き上げる。生産するのは、液晶テレビなどのボディーや自動車の内装に使う高品質なABS樹脂の主原料「アクリロニトリル(AN)」。同工場は、同原料の世界最大の生産拠点となる。③11年5月住友化学は、韓国に200億円を投じて、スマートフォンに使うタッチパネル工場を建設。12年12月には数十億円を投じ、工場を増強。製品は全量、サムスンに供給する。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>