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2015/10/16

<オピニオン>転換期の韓国経済 第68回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

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◆サービス産業の壁◆

 韓国経済の問題点の一つとして、過度な輸出依存体質が指摘されることが多い。近年のように、輸出が成長のエンジンとして十分に機能しなくなると、なおさらである。朴槿惠政権が策定した「経済革新3カ年計画」でも、ファンダメンタルズの強化、革新を通じた成長(創造経済の実現)とならんで、内外需の均衡のとれた成長が柱になっている。内需拡大の一環として推進されているのがサービス産業の振興である。

 韓国のサービス産業の現状はどうであろうか。OECD諸国の就業者全体に占めるサービス産業就業者の割合(2014年)をみると、オランダ、米国、英国などは80%前後と高い。韓国は70・0%で、一人当たりGDP水準にほぼ見合った水準になっている。

 しかし、付加価値額全体に占めるサービス産業の割合をみると、オランダが75・9%、米国が78・1%、英国が79・2%であるのに対して、韓国は57・4%に過ぎず、生産性が著しく低いことを示している。その要因は何か。

 航空、運輸、エンジニアリング、建設など国際的競争力を有する分野では大企業が中心的な役割を果たしているのに対し、それ以外の分野では中小企業や自営業が主たる担い手になっていることが関係していよう。

 中小企業の業種別構成は卸・小売(27・9%)、宿泊・飲食(20・1%)、運送(10・8%)、製造業(10・7%)となっており(データは12年、韓国中小企業庁)、中小企業が一部のサービス産業に集中していることがわかる。

 このように、就業者が多い半面、生産性が低い(製造業の約4割)の現状である。

 近年、政府は規制緩和を通じて付加価値の高いサービス産業(流通、金融・保険、教育、医療健康、ソフトウエアなど)の成長を図っているが、まだ十分な成果を上げていない。実際、サービス産業の成長率は製造業を総じて下回っている(上図)。

 サービス産業の発展が遅れていることに関し、次の二点に注意する必要がある。

 一つは、韓国では自営業者が数多く存在していることである。OECD統計によれば、就業者全体に占める自営業者の割合は27・4%(13年)で、他国と比較して著しく高い。

 企業を退職した人が飲食店や小売店などを営むケースが多いように、自営業は中高年の生活基盤の一部となっている。このため政府もそれを保護する政策を一部で講じてきており、これが結果として、サービス産業全体の生産性を低下させている。サービス産業を近代化すれば自営業者の生活基盤を損ないかねないため、大胆な政策が取れないというジレンマにも置かれている。

 もう一つは、労働市場の二重構造が維持されていることである。大企業では正規職が85%を占めるのに対して、サービス業の多くを担っている中小企業では54%である。

 日本では高度経済成長が始まった50年代後半に二重構造論が議論された。一国の経済構造の内部に近代的部門と前近代的部門が併存し、後者の停滞が前者の発展を制約しかねないという問題である。しかし、その後高成長が続く過程で賃金と物価が上昇したことにより、二重構造を支えていた低賃金基盤がかなりの程度解消されていった。同時に、高い専門能力に支えられて高い生産性をあげる中小企業が多く登場した。


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