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2018/01/01

<オピニオン>アナリストの眼                                                             アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

◆家計負債など構造的対策を◆

 2017年ほど東アジアの地政学的リスクが高まった年もない。いうまでもなく北朝鮮の繰り返される核実験を通して、核開発が進んでいることを予見させたことで、対米、対東アジアへの攻撃恐怖感を増加させたからだ。そのため韓国もTHAAD配備を進めたが、これに対する中国の報復措置によって中国市場でも韓国企業が苦戦することになった。国連でも最大級の対北制裁決議を決め、経済制裁の強化で応じるとともに米韓軍事演習の強化、長期化により北朝鮮への軍事圧力を強めている。これまでにない緊張した状況が続く中で、韓国は5月に大統領選挙を行い、文在寅政権をスタートさせた。

 文政権は民生経済再生を基軸に、デマンドサイド(所得、消費、需要)経済政策、すなわち需要を創出するための公共事業投資や定着した社会・経済両極化からの脱却のため低所得者、労働弱者支援、さらには高齢化に対する福祉・社会サービス向上、医療・教育サービスの拡充などの分配政策を掲げた。

 昨年後半期には世界景気の回復、アメリカ・日本の景気上昇などに支えられ輸出及び関連産業の生産拡大が見られた。そのことが、2018年GDP3%台成長の可能性を見せている。

 加えて、長い間停滞を続けた内需にも僅かながら回復の兆しも見え始め、消費が伸びている。地政学的リスクの懸念も排除できないが、仮にこのままの状態が続くのであれば、今年の韓国経済は一定程度景気が上昇し、マクロ的には経済拡大が起こるであろう。

 しかし、この傾向は一部の大企業、高所得層の拡大がけん引している現象で、国民経済が深部から成長するにはまだ時間を要する。したがって、人口動態の不利化(人口オーナス期突入)、両極化の深刻性、家計破綻の臨界点を含む家計負債の拡大など構造的課題など長期的対応を迫られる深層問題はそのまま持続するであろう。

 文政権は、12月6日、2018年度予算を国会本会議で議決した。歳入447・2兆㌆(約46兆円)、歳出428・8兆㌆(約44・5兆円)の大型予算を組んだ。

 主要政策項目は、


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