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2018/06/01

<オピニオン>韓国経済講座 第205回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

◆日本良いとこ?◆

 5月19日、20日に韓国ソウル三成洞にあるCOEX(韓国総合展示場)で「2018春(第3回)・日本留学&就職フェア」(日本学生支援機構主催)が開催された。同機構によると日本留学フェアは、「日本留学を希望する人、留学相談指導者、父兄などを対象に、日本の大学、大学院、専門学校、日本語学校が合同で参加して正確かつ幅広い日本留学情報を提供することを目的とする」もので、世界各国で開催されている事業である。今回は韓国で日本留学を希望する高校生、大学生、大学院生等が参加すると共に父母の参加が目立った。今回の参加機関は日本語学校、専門学校、高等学校、大学等がブースを出展し、多くの学生たちの相談に乗った。これとは別に日本企業への就業希望者に対して多くの企業が就業相談や面接を行った。

 留学希望者たちは日本留学に関する最新で的確な情報を得る貴重な機会であることから、とても熱心に自分がどうすれば日本に行けるのか、そのためには何を準備したらよいのかなどに質問が集中した。こうした日本進出への関心の高さは、国内就業の困難さと表裏一体の関係がある。

 韓国人の日本留学試験(EJU)応募者は、このところ年を追うごとに増えている。2002年以降現在までの推移では、2つのピークがあり、最初は2000年代後半に受験者が増え始め、09年の第2回目(EJUは毎年6月と11月の2回実施される)の2683名(全体)が第1ピークとなった。これは08年のリーマンショックの影響で就業状況が極めて困難であったことが背景にある。

 第2のピークは、17年の第2回目の3439名に及ぶ応募者である。リーマンショックからの景気立ち直りが進展したものの、IT分野など雇用機会の少ない一部産業がけん引役となったため、新卒者をはじめ若者世代の雇用が回復しないままむしろ悪化した。

 そうした若者未就業者の累積が次第にその世代幅を上位年齢層に拡大し、失業率の極めて厳しい状況を呈しているのだ。日本との比較でみると、10年の失業率は韓国3・71%、日本5・06%と日本の雇用状況が深刻な事態にあった。しかし、その後を見ると、13年日本4・01%、韓国3・10%、14年日本3・58%、韓国3・49%、15年日本3・38%、韓国3・59%と、日韓がここで逆転し、16年日本3・12%、韓国3・68%、17年日本2・88%、韓国3・68%と日本の失業率低下に対して韓国のそれは高止まり状況が続いているのである。

 韓国統計庁の18年2月時点のデータによると、15歳から29歳の青年失業率は9・8%で、先の平均失業率3・68%の約2・7倍の高さである。政府は若者就業促進に対応するため、雇用労働部などの関係部門で雇用委員会を設置し、新たに中小企業に就職する若者への所得支援を柱とする「若者雇用対策」を打ち出した。そこでは深刻な若者の就職難と中小企業の求人難を同時に緩和する狙いで、21年までの間に18万~22万人の雇用創出を目標としている。さらに22年までに日本やASEAN諸国など1万8000人の若者の海外就業を支援する「海外地域専門家養成方策」も発表し、日本をはじめとする外国企業への就業や、海外に進出している韓国企業への就業も支援するとしている。

 しかし現実的には国内雇用環境は依然として厳しく、若者の海外就業・留学への期待は強い。韓国の若年失業率が拡大する中で、日本では働き手の不足が失業率の低下となって表れている。こうした背景から、日本で就職する韓国人が増えており、17年に日本で就職した韓国人は


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