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2000/09/01

<随筆>◇関東大震災と在日◇

 揺れを感じない日の方が珍しい。連日のように震度2度3度の地震が続いており、大地震発生の不気味さを感じるときがある

▼大地震といえば阪神大震災もあるが、77年前の9月1日に発生した関東大震災が真っ先に思い出される。この大震災で14万人以上の犠牲者を出したが、この時、井戸に毒が投げ込まれたというデマが流れ、7000人ともいわれる在日朝鮮人が殺された嫌な事件があったからだ

▼デマに惑わされて竹槍などをもって朝鮮人殺害の先頭に立ったのは自警団であり、20代の若者たちがその中心だった。今日のように携帯電話やインターネットのような情報伝達手段が乏しく、デマに騙されやすかった面もあるが、腕力の強い若者が襲いかかる社会は恐ろしい

▼これと比べ、まだ記憶に新しい5年前の阪神大震災では、日本人、外国人が一緒になって助け合う姿があった。炊き出しに在日と日本人の若者たちが率先し、誰へだてなく「あったかいですよ」と声をかけていた。当時、被災現地で取材した経験があるが、外国人排斥のような雰囲気は全くなく、「共生」という言葉が流行ったのを記憶している

▼最大被災地、神戸・長田地区には在日をはじめ多国籍の外国人が多い。神戸はもともと国際都市であり、そうしたことも影響したのか知れないが、少なくとも関東大震災当時と比べ若者たちは腕力は劣っても外国人に優しい国際感覚を身につけているのではないか

▼在日団体や関係者の間では毎年9月1日になると、慰霊碑やお寺に集まり犠牲者の冥福を祈ることが慣習になっている。「共生」が根づくことを願って合掌。