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2024/04/19

<随筆>◇季節の移ろいの中で◇呉 文子さん

 雨上がりの朝、初夏のような温かい陽射しに誘われて久しぶりに近くの野川に散歩に出かけた。満開の桜が両岸の川べりに添ってしだれていて、得も言われぬ見事な景観をなしていた。

 水辺には、鴨が対をなしてすいすいと気持ちよさそう。そのすぐ隣にはカラスがもくもくと水を飲んでいる。またその隣の小さな岩には亀がのんびりと甲羅干し、その周りを川魚が小さな群れをなしていた。河川敷には鳩も群れていて、名の知れぬ愛らしい小さな鳥たちと仲良く餌をついばんでいる。なんとのどかで平和な風景だろう。人間社会もそうありたい。行き交う人の表情はとても明るく幸せそのもの。うららかな陽射しも微風も花を慈しむ人たちの心をやさしくなでていくようだ。


つづきは本紙へ