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2005/09/30

<随筆>◇北海道道南アルルチャ(駆け足)旅行◇                                                       韓国ヤクルト共同代表副社長代行 田口 亮一 氏  

 いつも秋夕連休は東京に行ったり大阪に行ったりと一人で好き勝手に遊んでいたのですが、今年は女房に機先を制され『北海道道南ツアーをミリ、エヤクヘッソヨ(既に予約したもんね)』と宣言されてしまいました。これをキャンセルするとニューオリンズハリケーン級の家庭災害を招くし、予約金もアクァッスムニタ(惜しい)なので、まァ考えてみればたまには女房孝行もしておかないと、この先体が動かなくなった時にどんな仕打ちをうけるかもしれないので、引きつった微笑で「ア~それは面白そうだねえ」と同意したという訳です。

 去年あたりからこの北海道旅行が韓国で大盛況らしいのです。
 
 第一日目は千歳空港について羊蹄山・支笏湖・洞爺湖などを見て洞爺温泉に泊まったのですが、そこのホテルの1000人は入ろうかという大食堂では、韓国・中国の人が大部分で、日本もたまたま17日から三連休になりましたが、とにかく飛び交う話は大体ハングル、時々中国語、まれに日本語と云う状況でノッレッスムニダ(驚きました)。

 またホテル内はもちろんのこと、主要観光名所には必ず日韓中の三カ国語の説明があり、いかに韓国の観光客が多いかをシルカム(実感)致しました。次の日は洞爺湖の遊覧船に乗ったのですが、そこの売店のおばちゃん達は「アジシ、イゴサセヨ」とうまくはないけどハングルで受け答えをし時代も変わったものだとつくづく感心させられました(これもヨン様の影響少なからず、かも知れません)。

 熊牧場を見て室蘭を抜け地球岬を経て登別温泉に入りましたが、登別温泉での毛ガニ食べ放題とカニ味噌汁は旨くて感激しました。食べ物ついでにやはりウニ・イクラは絶品ですが、イカは身が分厚くて普段食べてるものとはちょっと比較が出来ないくらい美味でした。二日間の温泉浴でシワは伸び伸び肌はツルツル、「お互いに若くなったネェ」と、これもややひきつり気味に女房とアブ(お世辞)を言い合いました。

 そして翌日は昭和新山、シラオイアイヌ民族村を観光し札幌市内に入り道庁・時計台などを見て夕食は市内の大きい焼肉屋さんだったのですが、ここでサービス大国日本の名声を貶める出来事がひとつ。

 牛肉・豚肉・鶏肉・羊肉・野菜食べ放題の店で私共のグループ10人に鉄板三つ、生ビール(これもマシイッタ)と焼酎(チャミスル旅行用小型瓶、誰か持って来た)で良い気分で飲んで喰ってると、鉄板もコゲつくじゃありませんか皆さん! そこで私が代表して「アガシ、ちょっと鉄板取り替えてちょうだい」と頼んだところ「鉄板取り替えは一つにつき500円頂きますけんね」と言われて全員が両脚を上に上げてきれいに引っくり返りました。

 韓国の皆さんは異口同音に「ヨクシ(やっぱり)イルボヌ…」私は「ムッ…」。帰国日は小樽に出て運河・魚市場などを見て買い物もし、最後にサッポロビール工場で作りたての生ビールを試飲して帰って来ましたが、一緒のグループの老・中・若の各ご夫婦のマナーの良さ、仲の良さを見て私も少し反省し、女房は少しキコマンジャン(意気揚々)となった北海道旅行でございました。


  たぐち・りょういち 1943年満州国生まれ。東京都立大学人文科学部卒。69年ヤクルト入社、71年韓国ヤクルト出向。94年から同社共同代表副社長代行。