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2008/12/19

<随筆>◇経済に対する楽観主義◇ ZOO・PLANNING 尹 陽子 社長

 身内の話ですが、現在NHK総合の土曜日夜に放送中の韓国ドラマ「ファン・ジニ」は私の妹で翻訳・通訳業の尹春江が翻訳したドラマです。ちなみに「映画版 ファン・ジニ」も。韓国ドラマが苦手な私もこれは観てます。なぜなら時代劇だから。これ以外で観たのは「宮廷女官 チャングムの誓い」。時代劇なら韓国ドラマもいいが、現代の恋愛ドラマは絶対いやになってくる、見ている自分がバカみたいに思えてきて。そんなことあるはずない!の連続のストーリー展開に耐えられない。韓国ドラマは、いまや韓日文化の架け橋になっていてもです。

 さて、先週その妹が韓国出張に行って、「日本の女性観光客がすごく多かった!」とびっくりしてました。そう、ウォン安円高で一気にお得になったせいです。韓国サイドも誘致に一生懸命らしく、韓国に行き慣れた女性たちのパラダイスになっている様子。買い物は以前の半額、エステや高級ホテルも半額なので、私の友人も一泊二日で楽しんでいるとか。利に聡いおばさま方の行動はすばやいものです。

 ところで、世界中を襲った金融危機の中で、不思議なのは韓国通貨ウォンのあっけない弱さ。世界一を誇る造船業、そしてサムスンなど家電メーカーは欧米で大人気、自動車もアメリカのビッグ3をしのぐほどで、技術と情熱は向かうところ敵なしのように見えるのになぜ? 疑問がつのります。ネットで原因をチェックしてみると、外国人投資家が株式を大量に売り払ったせいとか、金融面でのさまざまな要因が取りざたされていますが、もう一つわかりません。

 もしかしたら、ここ10年ほどの浮き沈みの激しいウォンの弱さは、お金に執着するのは恥ずかしいという儒教文化があるかもしれないとも考えてしまいます。なにせ両班(貴族)は儒学を究めてこそ、その存在価値があったのですから。しかし、お金に無頓着な人に憬れ、それを容認するDNAがある反面、韓国人の投資好き、イケイケどんどん、博打やお金大好き!なところも周知の事実。失敗を恐れない楽天的な民族性がそうさせるのかもしれません。

 最近、自分にもその韓国人気質を感じさせる瞬間があります。それはニュース番組を見ているときで、日本経済の見通しが悪いと、繰り返し繰り返し暗い内容を聞かされていると、日本人の悲観主義もいい加減にしてくれ!と心底思います。ここでまさに自分の楽観主義的な血脈の存在に気づくわけです。私がお世話になっている経営の先生は、いつも「最悪のときを想定して」と教えてくれます。ところができの悪い私は最悪のときのことを考えるのがすごく苦手。最悪のことなんて棺桶の中でだって考えたくはありません。これが単に個人の性格の問題とも思えなくて、昨今の韓国の経済状況と楽観主義が、どこかでつながっている気がしてなりません。


  ユン・ヤンジャ 1958年神奈川県生まれ。在日3世。和光大学経済学部卒。女性誌記者を経て、91年に広告・出版の企画会社「ZOO・PLANNING」設立。2006年6月「㈱生活文化出版」設立。