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2011/11/18

<随筆>◇カタツムリ・パック◇ マッカン・ジャパン 大西 憲一 代表

 「アイグー」(こりゃ参った)。山手線・新大久保駅から一歩外へ出たとたんに、思わずお国言葉が飛び出した。噂に聞いていた新大久保の韓流タウンは人人人で溢れていた。まるでラッシュアワー状態で週末の明洞も顔負けの混雑ぶりである。主役はもちろんアガシ(若い女性)とアジュンマ(中年女性)。

 通りには韓国レストランや韓流グッズ店がぎっしり並んでいるが、どの店もお客で一杯だ。丁度、祭日の昼過ぎということもあったと思うが、レストランの店先には長い列ができていた。人気メニューは定番の「チヂミ」や「サムギョプサル」に加えて、最近は「カムジャタン」や「スンドゥブ」といった新顔が上位にランクされているらしい。

 一番人気は韓国でも若い女性に愛されている「ホトック」で、97年開店と伝統(?)を誇っている「ジョンノ(鐘路)ホトック」の前はひときわ列が長い。店内では若い兄ちゃんが3人、汗を飛ばしながらまるで機関銃のようにホトック作りに精を出していた。

 大久保通りの中ほどにあるスーパー「ソウル市場」に入ってみたが、ここも大変な人出で熱気ムンムン。店内にはキムチ、ナムルなどの韓国惣菜やお菓子、酒類など韓国のスーパーにあるものは何でも揃っている。韓国で人気ブランドの焼酎「チョウンデー」360㍉㍑は韓国のスーパーなら1000ウォンだが、ここでは290円だった。好物の釜山生マッコリを見つけて思わずニンマリ。でもレジの前の列があまりにも長いので買うのは諦めた。

 90年代初めにも新大久保の韓国食堂に時々顔を出していたが、その頃と街の雰囲気がガラーッと変わっている。どう変わったか…?「若者の街、女性の街」への変貌だ。中年女性を虜にしたヨン様ブームは一段落したようだが、代わってK-POPに代表される韓流の新しい波が新大久保を席巻している。「グンちゃんたちに会いにイコッ!新大久保へ!」ミニコミ誌に活字が躍っている。「グンちゃん」とはチャン・グンソクのことで、今、日本で人気絶頂のK-POP韓流アイドルだ。ヨン様と違って可愛い兄ちゃんだが韓流も世代交代が進んでいる。

 韓国グッズでは「カタツムリ・パック」の人気がすごい。食品ではなく、女性が美容で顔に張り付けるパックのことです。通りの至る所で販売しているが飛ぶように売れている。「毒蛇パック」も人気がある。綺麗になるためなら怖いものなしですな。他にも「ヒマワリ」や「アボカド」などいろんなパックがあったが、「マッコリ・パック」には思わず手が出そうになった。

 でもこれだけ「カタツムリ・パック」の売れ行きが好調だと、原料が不足しないのだろうか?あのネバネバに効き目があると聞いたが、そのうちに代用品としてネバネバの仲間「ナメクジ・パック」も出回るに違いない。


  おおにし・けんいち 福井県生まれ。83―87年日商岩井釜山出張所長、94年韓国日商岩井代表理事、2000年7月新・韓国日商岩井理事。09年10月より韓国TASETO専務理事。2011年9月よりマッカン・ジャパン代表。