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2014/06/27

<随筆>◇韓日夫婦の子◇ 海龍 朴 仙容 相談役

 先々月、3人目の孫が生まれた。上の2人は孫娘で3人目は待望の男児。孫娘はすでに中学生と小学6年生になる。年が離れたせいか、誕生の感動が違う。男児で喜びが倍、それもあるにはあるが、実際はそうじゃない。孫娘らの誕生時、私は仕事人間で多忙な日々だった。67歳の今、仕事を離れて暇になった。新生児を迎えた時の境遇の違いが原因である。性差別ではない。

 それはそれとして、今、孫らの将来が気になる。3人共に韓日夫婦の子。父は在日コリアン(以後在日と略)、母は日本人である。在日の歴史も100年を超え、韓日夫婦が増え、生まれた子らも相当の数になる。韓日家族がまた新しい歴史を刻む。

 在日・日本人・韓国人とも異質、民族的な分類はできない。今では在日も韓国人とは言い切れないが、国籍や民族意識はコリアン、帰属意識は希薄でも国や祖国はある。曖昧さはない。韓日夫婦の子らはそんな在日とは異なる面を持つ。籍は韓日どちらかにあるが、両親の出身である二つの民族を心に抱えて生きる。両親が仲のいい時は問題ないが、2人の間に摩擦が生じると、その心は右往左往する。幼い頃からそんな体験を重ねる。

 国際結婚が増え、韓日に限らず複数の民族の血をひく存在は別段おかしなことではないが、韓日には特別な歴史がある。未だに難題が山積。孫らは複雑な立場にある。その将来は明るいとは軽軽に言えない。

 もはや在日と日本人の結婚は特別じゃない。文化面では国際結婚と言えない。在日の結婚相手はほとんど日本人、その結婚比率は85%を超え、年々増加、子たちが次々に誕生している。

 韓日夫婦の子らは成人すると国籍を自身が選択する。彼・彼女らの背負う荷物は従来の在日とは異なる。今、韓日関係は良好じゃなく、よくなる兆しもない。戦争体験者が激減し、それにともない人々の戦争に対する恐怖心が薄らいだ。領土を堅持する意識が強くなって諍いが続いている。

 将来、韓日夫婦の子が銃を手にし、銃口を父の国か、母の国に向けることもありえる。想像すると身震いする。でも、それは私の被害妄想だ。韓日夫婦の子らの活躍状況を見ると興味深い。

 素晴らしい活動をしている人がいる。韓日の血を引く彼・彼女らは諍いを解決する力を備えている。白眞勲議員(参議院)や俳優の大鶴義丹さんは、その代表的な人だ、後進に希望を与えている。もはや日本は多民族国家である。

 ひと頃、在日は無視され、透明人間と言われたが、韓日夫婦の子らをそんな存在にしたくない。韓日の関係改善に重要な人材だからだ。その特性が大旋風を捲き起す時が来る。両国間に漂う暗雲を吹き飛ばし、両者の和解に貢献する。彼・彼女らは、そんな期待ができる存在なのだ。


  パク・ソンヨン 1947年、福岡県北九州市生まれ。在日2世。拓殖大学卒業。2000年、韓国食品普及処「㈱海龍」創業。現在、海龍相談役。著書「親韓親日派宣言(亜紀書房)」。