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2023/08/11

<随筆>◇戦後責任を問う『闇に咲く花』◇金 珉廷さん

 8月、東京・紀伊國屋サザンシアターでは劇団こまつ座の『闇に咲く花』が上演中だ。9月には愛知、大阪、福岡でも上演される。「戦後責任」を追うことになった一人の青年の物語である。

 舞台は、「神田駿河台を西へくだる途中にある愛敬稲荷神社」。神主の牛木公麿と神社のなかのお面工場で働く繁子、藤子、勢子、加代、民子は、闇市で米を手に入れるなど、戦後の厳しさのなかでもたくましく明るく生きている。公麿には、一人息子がいるが、戦争が終わって二年が経っても帰ってこない。戦死したと伝えられた。公麿にとって戦争が始まってから神様はずっとお留守である。神様は息子の「健太郎を召し上げてどこか遠くに行ってしまわれた」のだ。


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