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2014/11/28

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第10回                                                                  日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第10回

◆攻撃的M&A、目先の狙いはBtoB◆

 サムスン電子のM&A(合併・買収)が活発化している。サムスン電子のM&Aは2010年以前までは半導体分野に力点が置かれていた。非メモリーなど脆弱な事業の競争力を補強するために設計専門会社などを買収する戦略であった。しかし10年以降、医療機器、ヘルスケア、電子素材、ディスプレーパネルなどのM&Aが目立ち、14年に入るとウェブサービス、モバイルエンターテインメント、スマートコンテンツなどソフト開発に関連したM&A戦略を展開している(図表)。サムスン電子のM&Aを主導しているのは企画チームである。企画チームの主要な役割の一つは、全世界多様な企業の中からM&A対象を探し出し、選定することである。次に財務チームが選定企業を評価分析して価値を算定し、それを受けて戦略TF(タスクフォース)を主とした交渉チームを編成し、当該企業に送り込むのが通常のパターンである。交渉の結果、M&Aの金額が妥当かつ将来性があると判断した後、企画チームは関連事業部に提示する。

 ここにはひとつの問題がある。各事業部の意向でM&Aが遂行される仕組みではないため、事業部のこれまでの蓄積や今後の方針とズレが生じやすく、買収後、有機的に機能するまでには時間がかかることである。つまり短期的には費用に見合った効果が生まれにくい。一般的にグローバル企業のM&Aは、一般的に各事業部が実務の中から対象企業を探し出す。選定された企業が今後の事業展開軸と評価額に見合っていると判断されれば、全社のM&A統括部署が最終的に承認する。


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