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2016/04/22

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第26回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第26回

 サムスン電子では毎週水曜日午前8時、李健熙会長が「読書より講座が効果的」との鶴の一声で、「水曜社長団協議会」が開かれるようになった。座長は副会長の輪番制で、サムスン電子の副会長・社長ならびにグループ会社の社長ら40~50名が出席する。ただし、李一族(李健熙会長の長男の李在鎔、長女の李富眞、次女の李敍顕)は参加していない。昨年この協議会に呼ばれた講師48名のうち34名が大学教授【延世大教授9人、ソウル大教授7人、韓国科学技術院(KAIST)6人など】が多くを占め、主題の中で最も多かったのは、科学、未来産業の12回で、次いで中東問題と南北統一問題など政治・外交問題の11回であった。経済・社会・歴史・文化・技術など各分野において、最高レベルの専門家が招かれている。ちなみに講師に支払われる謝礼は、通常一人500万㌆である。

 この水曜社長団協議会の講師と講演内容から読み解くと、去年と今年に入ってからでは、サムスングループの雰囲気が様変わりしているのが分かる。去年までのテーマは、急変するグローバル経営環境や人間科学への理解を深めることに主眼が置かれていた。つまり経営に関するテーマであっても、文化人類学からの見地や人類の幸福、など経営陣の一般教養を高める講話が主におこなわれていた。ところが今年1~3月に開かれた社長団協議会の講義内容をみると、新市場開拓や革新技術など、サムスングループの差し迫ったテーマに集中している。年初から特定の戦略が主題に上がっていることは、サムスングループが新しい成長源を必死に模索し、現在の閉塞した事業環境をいかに突破していくか、という危機意識を反映している。

 今年1月の第1回目は例年通り、サムスン経済研究所所長による国内外の経済問題の解説、第2回目は駐韓インド大使によるインド経済など一般教養的な講演であったが、1月20日の第3回目以降になるとテーマに大きな変化が表れ、サムスン電子がスマホ・半導体の次に育てようとしている新規事業・革新技術に焦点が絞られている。


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