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2016/06/24

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第28回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第28回

◆シリコンバレーに託された次世代技術◆

 サムスン電子では革新的な次世代技術が見当たらない現在、最後の拠り所は米シリコンバレーである。サムスン電子がシリコンバレーに進出したのは1983年7月、現地法人(SSTI)を設立したことに始まる。シリコンバレーはサムスン電子にとって研究開発(R&D)の最前線であり、将来の革新技術を発掘するとともに、ベンチャー企業の最新技術・製品・部品情報に至るまで、収集・分析が行われている。現在、シリコンバレーに1500人の研究者が集められ、彼らにサムスンの未来が託されている。なお研究機関以外にサンノゼには、2015年9月に完成したサムスン電子DS(部品)部門米国本社があり、米国内の半導体などの営業スタッフ中心に1000名が働いている。

 1500人の研究者は3つの研究機関に所属している。サムスンリサーチアメリカ(SRA)は革新的な技術研究、グローバルイノベーションセンター(GIC)は買収合併(M&A)と戦略的投資などによる革新技術の獲得、ソウル本社・デジタルソリューション(DS)事業部傘下のサムスン戦略革新センター(SSIC)は、半導体、ディスプレーなどサムスン電子部品事業の未来成長力の開発を担当する(図表)。

 14年12月マウンテンビューの新社屋に結集したサムスンリサーチアメリカは、800人ほどの研究員を擁し、9のラボ(実験室)、1センター、1チームから成っている。現地報道から11の研究組織と主な活動内容を列挙すると以下の通りである。

 ①コンピュータビジョン・ARラボ(16年6月新設)=拡張現実(AR)と人工知能(AI)を通じて、自律走行システムの開発研究

 ②先行素材ラボ=バッテリー利用時間を増やして、ディスプレーの消費電力を低くするなど次世代エネルギーとディスプレーソリューションの研究

 ③先行プロセスラボ=モバイルグラフィック用ソフトウエアソリューションを担当、モバイル機器の演算作業を担当するシステム半導体の研究

 ④BtoBリサーチラボ=サムスン電子のモバイル決済サービスであるサムスンペイとセキュリティー・ソリューション・ノックス(KNOX)を研究

 ⑤モバイル革新ラボとモバイル・プラットホーム・ソリューション・ラボ=サムスン電子のスマートフォン・ギャラクシーに必要なソフトウエア開発を支援

 ⑥モバイルプロセッサー革新ラボとスタンダード・アンド・モビリティーラボ(テキサ
ス州)=スマートホーム、モバイルヘルスケア、ネットワークインフラなどを担当、ギャラクシーの試作品を実験研究


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