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2017/04/28

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第38回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第38回

 中国市場ではモジュール製品の典型である携帯電話など、低価格製品との激しい競争に巻き込まれている。サムスン電子は家電製品でも差別化が可能な高付加価値製品で、米国市場に活路を切り開こうとしている。

 今年4月のサムスン電子事業報告書によれば、昨年末サムスン電子の従属法人数は韓国内20、海外149の計169カ所であるが、地域別にみれば米国法人は44カ所で1年間に11カ所増えている。中国法人や欧州法人が減少していることと対照的である。

 加えて今年に入りトランプ政権の誕生が、米国生産拠点を重視せざるを得ない状況に追い込まれている。トランプ大統領は就任当初より「保護貿易主義」を謳い、米国内への工場移転や新工場建設を誘致することにより、米国産製品の購入と雇用を生み出す「Buy American、Hire American」戦略を掲げている。世界標準の投資・貿易ルールであるTPP(環太平洋経済連携協定)から正式に離脱し、メキシコ、カナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉は6月に始まる。

 現行の貿易制度を根本的に見直すことで、関税率の引き上げなどにより、貿易不均衡の是正を最優先課題に掲げている。具体的には、メキシコなどで生産される家電製品に35~40%の高い関税をかける可能性を検討している。

 メキシコにはサムスン電子の米国向け輸出拠点であるSamsung Mexicana(SAMEX)とSamsung Electronics Digital Appliance Mexico(SEDAM)があり、両工場とも米国カリフォルニア州と隣接しているメキシコ・バハカリフォルニア州ティフアナとケレタロ州サンチアゴ・デ・ケレタロにあり、テレビ・洗濯機・冷蔵庫などを生産している。韓国から米国向けの投資推移を過去3年間についてみると(図表①)、2016年に180億㌦と他の諸国を大きく上回る高い水準を記録しているが、対米投資の多くが卸小売業などのサービス・流通業に偏っており、製造業の対米投資はごく限られている。


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