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2017/06/02

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第39回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第39回

◆印スマートフォン市場で躍進する中国企業◆

 世界のスマートフォン市場は、人口約14億人の中国に次いで2011年の国勢調査で人口12億人を超えるインドが、米国を抜き第2位に浮上している。サムスン電子は、成熟期に入っている先進国や激戦の末追い出されつつある中国市場に固執するのではなく、今後成長が期待される新興国市場であるインド・ブラジルなどに活路を見出そうとしている。特にインドが注目される訳は、巨大な人口と高い経済成長率だけではなく、LTE(ロングタームエボリューション)規格の高速通信網が普及したことにある。通信インフラが整備されたことで、携帯電話の普及は加速している。

 サムスン電子のインド進出は、1995年にインド法人(SIEL)を設立したことから始まる。翌年にはバンガロール市にソフトウエアセンター(SISO)、電子関連の生産・販売する持ち株会社を設立した。

 家電製品の現地生産が本格化するのは92年である。この年の9月に印ノイダに電子レンジ冷蔵庫カラーテレビなど家電製品を生産する現地法人SIELを設立、さらに12月には2500万㌦投資して冷蔵庫工場を建設する計画を発表した。

 インド進出から10年目の節目の2005年にはインド戦略会議を開催し、10年の売上げ目標を55億㌦とする意欲的な目標を掲げた。10年以降になると、ソフト開発、家電製品に加えて携帯電話の現地生産が本格化した。インド市場に適応するために、携帯電話は低価格に抑えただけでなく、英語・ヒンディー語などの公用語のほかにベンガル語などの現地語に対応した携帯電話を投入したことが功を奏し、15年にはシェア40%と圧倒的な支持を得た。

 16年の印スマートフォン出荷台数は、前年対比5・2%増の1億910万台に達している。市場調査機関IDCの集計によれば(17年2月)、サムスン電子は16年の印スマートフォン市場で24・8%の占有率でトップであった。2位のレノボグループ(8・9%)に大差をつけていた。3位はインド現地企業マイクロマックス(7・1%)、4位リライアンスジオ(7・1%)と続き、そして5位が中国企業シャオミ(6・6%)であった。

 ところが今年に入ると、インド・スマホ市場の様相は一変している。市場調査会社カウンターポイント・リサーチによると(17年4月)、今年第1四半期のサムスン電子のスマホ市場シェアは26%と堅調に推移した中、中国のシャオミが13%の占有率で、昨年の勢いそのままに第2位に飛躍している(図表①)。シャオミはサムスン電子に遅れること4年後の14年にインド市場に初めて進出し、以後、占有率を着実に高めている。


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