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2017/08/25

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第42回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第42回

◆ポストチャイナを確立するベトナム②◆

 サムスン電子のベトナムシフトは、中国生産拠点の縮小・移転にとどまらず、韓国内においても、携帯電話の亀尾工場や光州工場の生産縮小に波及している。これは当然、韓国内の雇用減少として表れる。文新政権が雇用拡大を最優先課題に挙げている中、サムスン電子は、トランプ政権の保護主義への対応の一環として、米サウスカロライナ州に生産拠点を設け、1000人の雇用をもたらすとしている。サムスン電子は米国において雇用を創出し、さらに米国をはるかに上回る雇用機会をベトナムにもたらしている。

 サムスン電子のベトナム進出は、2009年のBac Ninh (SEV)で携帯電話の本格生産に始まり、14年Thai Nguyen (SEVT)に生産拠点を拡張するなど加速している。SEVT工場は、SEV生産ラインの2倍の規模である。

 今年2月末までにこれら工場に投資された金額だけで67億㌦に達する。SEVに22億㌦、SEVTに45億㌦が投資された。これらにサムスングループ全体を含めてみると、対ベトナム投資は、過去10年間累計で173億㌦に達する。

 サムスン電子のSEVとSEVT工場に勤める従業員は、17年4月末現在、計10万7000人である。内訳はSEVに4万2000人、SEVTに6万5000人が雇用され(図表①)、サムスングループ全体では合計14万9000人にのぼる。サムスングループの協力企業や下請け企業の雇用者までを含めると、その倍の30万人の雇用がベトナムで生まれていると推定される。

 ベトナムで生産されて全世界に輸出されるスマートフォンは急増している。13年243億㌦であったサムスン電子のベトナムからの輸出額は、SEVTが稼働し始めた14年に266億㌦、15年には334億㌦を記録した。15年にSEVTの輸出額がSEVを超え、昨年には両工場合わせて362億㌦に達した。


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