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2018/05/18

<Korea Watch>曲がり角の韓国経済 第31回 韓半島に春が来ることを願う                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆板門店宣言の履行で大きな経済効果発生に期待◆

 最近、南北関係が早いスピードで改善している。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し続け、韓国や日本のみならず世界全体が脅威にさらされたのがわずか6カ月前のことである。今年で分断から73年、韓国戦争の停戦から65年になった韓半島に春は来るのだろうか。南北関係改善のきっかけになったのは平昌冬季五輪であるだろう。今年2月に開催された平昌冬季五輪に北朝鮮はスキー、スケート、アイスホッケーの3競技に22選手とコーチ・役員24人の選手団、そして報道陣21人を派遣した。また、アイスホッケー女子ではオリンピックでは初めて南北単一チームが結成され、2月9日の開会式では南北選手団が「統一旗」を使用し合同行進を行った。平昌冬季五輪での交流は、スウェーデンのハルムスタッドで開かれた2018世界卓球選手権にも繋がり、5月3日には南北女子卓球が、南北単一チームを電撃構成した。南北の卓球チームが一つになったのは1991年千葉世界選手権大会以来27年ぶりだ。

 文化芸術分野の交流も活発だ。玄松月団長が率いる137人の団員から成る北朝鮮の三池淵管弦楽団は、平昌冬季五輪の祝賀イベントとしてソウルや江陵で2回にわたり公演を行った。抽選により無料で提供された合計780組(1560人)のチケットには15万人を超える応募が殺到したそうだ。また、3月31日は韓国の芸術団約160人が北朝鮮の平壌を訪ねて4月1日と3日に公演を開いた。このようなスポーツ及び文化芸術の交流の結果は、4月27日の板門店にての南北首脳会談に繋がり、11年ぶり3回目の南北首脳会談が開かれた。文在寅大統領と金正恩国務委員長は、板門店の韓国側にある「平和の家」で首脳会談を行った後、「韓半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」を発表した。板門店宣言では、韓半島に今後、戦争はないことを宣言しており、その主な内容には、非核化による核のない韓半島の実現、終戦宣言、平和体制の構築、将官級の軍事会談の開催、鉄道や道路の南北連結事業の推進、18年アジア大会をはじめとした国際競技に共同で出場、離散家族・親戚再会事業の推進、首脳会談やホットラインの定例化、18年秋の文大統領の平壌訪問などが含まれた。

 金委員長が「社会主義経済強国の建設」のために、経済部門を開放すると、文大統領の「韓半島の新経済指導構想」を中心に、北朝鮮の社会間接資本(SOC)に対する韓国側の大々的な投資と開発が行われる可能性が高い。実際、南北の交易金額は15年まで増加傾向であった。特に、04年末に開城工団に韓国企業が入居してから交易量は大きく増加し、05年には始めて交易金額が10億㌦を超えた。また、15年の交易量は27億㌦で歴代最高額を更新した。しかしながら、16年2月に開城工団が閉鎖されてから、南北の交易量は大きく減少し、現在はほぼ交易が行われていない状況である。

 従って、今後、板門店宣言の内容が実現されると、南北間の交易が回復され、大きな経済効果が発生すると期待されている。韓国経営者総協会は、「韓半島の地政学的リスクが減少することにより、消費と投資心理が改善され、対外信頼度が向上されるとともに、北朝鮮への社会間接資本及びインフラ投資の誘致、開城工団の再稼働、観光事業の再開により景気が回復し、経済が成長するきっかけになるだろう」と期待感を表明した。また、韓国貿易協会も「北朝鮮の核の問題が解消され、過去とは異なる持続可能で安定的な南北交易の道が開くことを期待する」と南北首脳会談を肯定的に評価した。

 開城工団の再稼働や新しい経済協力事業の推進は、中小企業を中心とした韓国企業に活力を呼び起こす可能性が高い。また、


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