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2002/07/26

<韓国文化>「色と光」で韓国を体験

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            姜用旻の「温故而知新―霊魂」(2001年)

 今年5月、ソウル市貞洞通にソウル市立美術館が新たに開館。同美術館の開館記念展として企画された「韓国の色と光」展は、色と光をキーワードに、韓国美術の独自性や多様性を体感してもらうのが狙いの展覧会だ。愛知県立美術館ではソウル市立美術館の全面協力で、26日から9月23日までこの展覧会を再構成し、特有の色彩感覚を示す韓国美術を紹介する。

 展覧会では、①韓半島に伝授された色(土の色)、②画面(内と外=film color)、③美術史の色(印象主義、表現主義、抽象主義など)、④電子メディア時代の色(現代の色)の4部構成。韓国人の陰陽五行の原理を基礎とした色彩体系を反映した、絵画、メドゥプ(組みひも結び)、刺繍、ポジャギ(風呂敷)、刺繍胸背(官服の胸と背中に付けた官位を示す文様)、セットン・チョゴリ(色の縞を袖に入れた子供用の韓服の上着)、インスタレーション、映像作品など、さらには韓国に古来から伝わってきた92種類の色とその色の名前が展示される。

 色は、人間の目が受け止める外部からの刺激を指し示すものであり、その実態は光だ。従って、色を見るためには目を開かなくてはならない。しかし、目を開いていても、光がなければ色を見ることはできない。光は太陽の光線、すなわち光の波長を意味する。世界中の多くの神話で語られているように、あらゆる生命の起源は共通して、それが海から生まれようと、土から生まれようと、空から降ってこようと、決まって「はじめの暗闇」があったとなっている。

 韓国の開国神話『檀君神話』には次のような記述がある。「一匹の熊と虎が同じ洞窟に暮らしていたが、桓雄に向かっていつも人間になりたいと望んでいたところ、これに対し桓雄が神霊なヨモギ一束とニンニク20個を与えて言うには、「お前たちがこれを食べ、太陽の光を100日間見なければ人間の姿を手に入れることができるであろう」。

 虎は100日間の暗闇に耐えられず洞窟を飛び出すが、熊は100日耐え抜いて人間の姿を手に入れ、初めて光を浴びることになったという神話で、開祖檀君はそのとき人間になった熊女の子宮から生まれたことになっている。神話や伝説は論理的つながりではない、古代の英知を根元とする世界観を反映しており、先祖から伝来していきた記憶を元にしたものだ。神話からひそんでいる真理や永遠の意味を読み取ることができる。「韓国の色と色彩」展の導入部は、このような暗闇から導かれ、韓民族が光を迎える経過を可視的に再現した。

 また韓国の文化は陰陽五行の世界観に基づいた文化。陰陽五行とは、天地万物の根元である火、土、金、水、木がそれぞれ相生し、相克する道理を生み出すという思想だ。そして韓国の伝統色彩体系は陰陽五行の五元素に該当する色、赤(火)、黄(土)、白(金)、黒(水)、青(木)の陰陽五行の原理によって構成される。韓国は陰陽五行思想に基づいた色彩体系を生活に活用する独特な色彩文化を形成し、このような文化は長い間韓国人の色彩意識を支配した。

 韓民族が白衣の民族と呼ばれるのも、韓国人の色彩に対する意識の反映であり、陰陽五行思想に基づくものだ。有彩色は華麗、奢侈、権威の象徴として権力層の占有物であり、韓国文化において色は、感覚、欲望として認識された。白色を崇拝した韓国人の深層心理には、欲望志向よりも禁欲的人格志向といった韓国人の人生観と意識が潜在的に存在している。


会期:26日~9月23日、午前10時~午後6時   
   (金曜日は午後8時まで開館、月曜休館)  
会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
料金:一般1,100円、高大生800円、小中学生500円
記念講演会:27日午後1時半~3時        
   講師:嚠俊相(ソウル市立美術館館長)   
   会場:愛知芸術文化センター、聴講無料   
℡052・971・5511(愛知県美術館)