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2003/05/30

<韓国文化>本紙20年目の愛読者からメッセージ  女優・黒田福美さん

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    くろだ・ふくみ  1956年、東京生まれ。桐朋学園大学演劇科卒業。映画、テレビドラマなどで俳優として活躍。芸能界きっての韓国通。アミューズ所属。

 創刊58年・東京本社開設45年、おめでとうございます。

 本紙を読み始めたのは84年からですが、文化面が充実していることはなによりです。当時日韓の話題といえば指紋押捺拒否や在日の人権といった堅苦しい話題が多く目に付きましたが、それがかえって韓国に「与しにくい国」というイメージを与えていたことも事実だったと思います。そんな風潮のなかで「文化」をクローズアップしてゆくことが大切だと私は考えたのでした。

 サッカーワールドカップ(W杯)韓日共催大会を翌年に控えた2001年、そして大会が開催された2002年にかけて、初めてソウルに家を借り、東京とソウルを往来する二重生活をしました。

 押しも押されもしない先進国となった韓国は、次には日本から「親切・清潔・秩序」を学び、日本の正確な仕事ぶりを手本にしようと謙虚に努力していました。さらに国を挙げて外国人を温かく迎えるために国民が心を一つにしました。なかでも私が感動したのは、W杯に際して日本から訪れる観光客のために、かつて日帝時代に名前も言葉も奪われて、日本人として教育された世代の方々がボランティア通訳やガイドとして立ち上がった姿でした。

 日本からの独立運動の象徴であるタプコル公園では、まさに三一独立運動の弾圧によってご主人をなくしたのだという老婦人がガイドをしていらっしゃいました。彼女は「これからの若い人たちには歴史を正しく知ってもらって、いがみ合うばかりでない、新しく温かい日韓関係を築いてもらいたい。そのためにお役に立ちたい」とおっしゃいました。

 また、仁寺洞ではかつての日本軍将校であったというボランティアの方にもお目にかかりました。こういう人々に支えられてW杯は成功し、両国は近づいていくのだと実感する瞬間でした。

 昨年はW杯組織委員会理事としての活動、そして「ソウルの達人 最新版」「ソウルマイデイズ」などの出版を通して、韓国人の日々の暮らしを伝えてきました。今年は7月に「隣の韓国人 その傾向と対策」を出版します。日韓が近くなり、仕事を共にする機会が増えるほどに軋轢も多くなります。しかし日本人はまだまだ韓国人を外国人として認識しておらず、自分たちの物差しでおしはかってしまうため、いつまでも同じようなトラブルでつまづいているのです。手助けになるようなマニュアル本になったらと思います。

 自己主張できないことが致命傷になりえた韓国、和を保たないと生活できなかった日本、両国の文化的差異を知ればもっとお互いを理解できるようになるのではないでしょうか。
 金大中・前大統領の日本文化開放、そしてW杯前後の文化交流で日韓の意識は大きく変わりました。

 本紙の文化面に今後も期待したいし、私も日本のマスコミに登場しない韓国の素顔を紹介することで日韓友好に貢献したいと考えています。