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2005/06/24

<韓国文化>韓日音楽事情 音楽ジャーナリスト 川上 英雄氏

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    かわかみ ひでお 音楽ジャーナリスト。1952年、茨城県土浦市生まれ。日本大学芸術学部美術デザイン科卒業。79年より評論、コーディネート活動を展開。著者に「激動するアジア音楽市場」(シネマハウス)など。

 “韓流ブーム”の完全な定着で、これまで“冬ソナ”を筆頭としたドラマや映画に引っ張られてきた感の強いKポップが、そろそろ独自の市民権を確立し始めたように見える。

 ここ1~2年、あまりに多くのアーチストが日本上陸し、デビューを果たしたので、その全てを紹介することは不可能である。

 注目されるのは母国以外にアジア圏でも幅広い人気を誇るリナ・パークが、6月10日に東京で、堂々の日本公演を行い好評を博したことだ。

 ユナイテッド・アジア・エンターテイメント発売のアルバム第2弾『Beyond the line』及び最新シングル『Sanctuary』も人気上昇中で、R&Bそして本場のソウル歌手を彷彿とさせる官能的なボーカルは正に魅力的。今後ブレイク間違い無しといった予感を抱かせる…。

 母国韓国では、すでにナンバー1の実力と名声を勝ち取ったリナ・パークだが、全米デビューもそう遠くはないと思われる。

 さて、今や“イケメン”の代名詞として韓国男性アイドルは多くの日本人女性を魅了してやまない。

 その筆頭であるペ・ヨンジュンをはじめとする『韓国四天王』に次ぐ人気を誇るソン・スンホンが、去る4月21日にテイチクエンタテインメントより、日本デビューを果たした。

 ソン・スンホンは、日本で韓流ブームを起こすきっかけとなった『冬ソナ』と同じ監督の作品『四季シリーズ』の第1作『秋の童話』で主役を演じた人物。日本では昨年WOWOWでも放映され話題を呼んだので、記憶している方も少なくないことだろう。

 日本盤はCD及びDVDからなる2パッケージ仕様で、『秋の童話』の主題歌『祈り』など、どこかはにかんだような初々しいボーカルで切ない男心を漂わせている。

 切れ長の精悍な瞳が印象的なソンだが、現在は兵役中で芸能活動は休止状態。活動再開後どんな姿を見せてくれるのか、ファンならずとも期待は尽きない。

 ところで、ムード歌謡畑の人気シンガー、チェ・ウニが、同じくテイチクエンタテインメントより、『トーキョー・トワイライト』など自身の日本語ヒットソングのハングルバージョンを多数収録したアルバム『もう一度純愛』をリリースし、静かなブームを呼んでいる。

 今回は、日本でのオリジナル曲以外にも、原語による冬ソナのテーマ曲『最初から今まで』や、NHK放映のドラマ『美しき日々』から『願い』など、認知度の高い名曲にも挑戦。

 哀愁感漂う独特のチェ・ウニ節は、他の追随を許さぬ雰囲気を醸しだしており、韓国でのリリースも期待したい。

 また、韓国サイドに目をやれば、日系のレコード会社ソニーやポニーキャニオンコリアから、日本人アーチストがデビューを続けている。

 6月初頃の時点でさほど目立った動きは残念ながら見られないが、ともあれ両国の音楽交流が深化していることは大きな喜びだ。 

 韓国では最近、歌謡界の大御所・趙英男が執筆した単行本『殴り殺される覚悟で書いた親日宣言』(日本では『ランダムハウス講談社』より発売中)が、センセーショナルな話題を巷に提供している。

 ネットへの何とも物騒な書き込みや、ある種の脅迫行為が趙氏に寄せられ国中で物議を醸し出していた。

 “韓日友情年”の最中に再び両国間の大きな問題として浮上した『竹島(独島)』と『教科書』のはざまで、趙英男の良心的な問いかけの波紋はあまりにも大きく、長年海峡の両側で日韓の文化交流に携わってきた関係者たちは多いと戸惑いを見せている。