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2006/08/25

<韓国文化>進む韓日クラシック交流

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    オ・チュングン 1960年韓国生まれ。82年ソウル大学音楽学部器楽科卒業後、KBS交響楽団に入団。85年から92年まで釜山市立交響楽団のコンサートマスターとして活躍。その後米国留学して指揮を学ぶ。2000年釜山シンフォニーオーケストラの常任指揮者に就任。高神大学教授。

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    ペク・ホンスン 朝鮮大学校師範大学音楽教育学科卒業。ポーランド・ショパン音楽院修了。ルーマニア国立交響楽団、ブルガリア・バーナ国立交響楽団など国内外の演奏団体と共演多数。現在、朝鮮大学校、湖南神学大学校、全南芸術高等学校講師、白芸フルートアンサンブルのリーダー。

韓国の光州を拠点に活動するソリストと日本の読売日本交響楽団有志が共演する「韓国ソリスト&読売日本交響楽団メンバーによる協奏曲とアリアの夕べ」(東洋経済日報社後援)が、9月4日に新宿文化センターで行われる。韓国のフルート奏者、白弘昇は日本との音楽交流に携わっており、その縁で今回のコンサートが実現した。また東京フィルハーモニー交響楽団は、韓国の新進気鋭の指揮者、呉忠根さんを招いて15日に特別演奏会を行い、好評を博した。白弘昇さんと呉忠根さんに話を聞いた。

◆フルート奏者 白弘昇(ペク・スンホン)さん◆

韓国の光州を拠点にするフルート奏者。ルーマニア国立交響楽団、ブルガリアシンフォニーオーケストラなどとの共演もある。2002年には、教え子たちと一緒にフルートアンサンブルを作って演奏活動に取り組んでいる。

 「日本に素晴らしいフルートアンサンブルがあるのを知って、私たちにも出来るのと思ったのが結成のきっかけ。グループ名はきれいな芸術を目指すという意味を込めて『白芸』と名付けた。クラシックから韓国の歌曲まで何でも演奏する。メンバーは12人で、家族のような関係。私の妻はピアニストだが、やはりメンバーの一員だ。(笑)。10年後、20年後には世界的なフルートアンサンブルになりたいと思って、日々精進している」

 9月4日に新宿文化センターで開かれる読売日響との韓日交流コンサートには、そのメンバーから数人選抜して参加する。

 「読売日響のフルート奏者、梅津正好さんと数年前、知人の紹介で知り合った。以後付き合いを深め、今年2月には日本で梅津さんたちと一緒に小さなコンサートを開いた。さらに4月には梅津さんに光州に来てもらって音楽会を行った。学生達の練習を見てもらったりもしている。そういう交流の積み重ねの上で、今回のコンサートを開くことになった。クラシックの名曲だけでなく、『麦畑』など韓国の歌曲も選曲したので楽しんでもらえると思う」

 「『五月』という交響曲を日本初演する。鄭有河氏が作曲したものだ。80年に光州で起きた民主化闘争で多くの光州市民が空挺部隊に殺された。私は当時、中学1年生だったが、市民や学生が軍隊に投石して抵抗しているようすや、殺された人たちをこの目で見た。いまは光州は民主化運動の聖地になっているが、当時のことは多くの光州市民にとって一生忘れることができない事件だ。それを音楽で表現する。この曲を読売日響が演奏してくれることは、とても意義深いと考えている」

 韓日両国は政治や歴史認識で多くの問題を抱えているが、「だからこそ民間交流は前進させなくてはいけない」と強調する。

 「韓日の音楽交流はこれから重要性を増すだろう。また音楽教育は日本の方が進んでいるので、韓国のクラシックの水準を高めるためにも交流は意味があると思う」


◆指揮者 呉忠根(オ・チュングン)さん◆

昨年、東京フィルの来韓公演で指揮を行い、激情的ながらも正確な音楽表現で、観客から絶賛された。韓国音楽界のニューリーダーとして大きな期待を集めている。

 15日の日本公演では、韓国で人気の日本人ピアニスト、倉本裕基さんとの初共演もこなし、好評を博した。

 「昨年、韓国で一緒にやったので、非常に身近に感じ、リラックスして指揮ができた。海外では過去にも何カ所か行ったが、本格的なものは今回の東京フィル公演が初めて。韓国の指揮者にはチョン・ミョンフンさんという大先輩がいる。同じ韓国人としてだけではなく、一人の音楽家として、指揮者として尊敬している。今回、その大先輩が率いる東京フィルで指揮することができて、光栄に思っている」

 6歳からヴァイオリンを学び、コンサートマスターとして長年活動、その後、指揮者に転身した。

 「コンサートマスターを10年以上務め、その時は指揮者の指示に従うだけだったが、今ではその反対の立場で自分の思い通りに指揮できる。それが(指揮者の)大きな魅力だ。日本はファンの質が高いし、機会があれば今後も日本で指揮をしてみたい」

 韓国でのクラシックを取り巻く環境は悪くなっており、クラシックのCDや公演チケットが、あまり売れていないので、危機意識を強く持っているという。

 ポップスなど韓国と日本の音楽交流が深まる中、クラシックももっと交流を深めたいとの希望がある。

 「ポピュラー音楽は韓流ブームなどもあり、非常に活発に行われている。今回共演した倉本裕基さんも、韓国では異例の120万枚というアルバムセールスを記録している。しかし、クラシックに関しては、なかなか厳しい状況にある。われわれクラシックに従事する人間がもっと努力し、日本のオーケストラももっと積極的に招き、交流を深化させたいと考えている」


■韓国ソリスト&読売日本交響楽団メンバーによる協奏曲とアリアの夕べ■

日 時:9月4日午後6時半開場、7時開演
場 所:新宿文化センター大ホール
料 金:全席自由3,000円
主 催:光州文化芸術研究所
    レックス(℡0422・22・1980)
後 援:東洋経済日報社ほか