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2007/02/02

<韓国文化>見直される伝統的な雑穀食

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    韓国では食の安全への関心の高まりと共に、バラエティー豊かな伝統雑穀料理が復権している

 「韓国・日本つぶつぶ交流記念シンポジウム」がこのほど、東京のつぶつぶカフェ・いるふぁ店で開催。韓国国立江原大学校 農業工学部教授でライフシード・コリア(2006年9月発足)代表、韓国雑穀研究会会長、国際そば研究会会長でもある朴チョルホ氏が「韓国の雑穀生産と利用現況」と題して講演した。要旨を紹介する。

 韓国ではこれまで、雑穀を学問として、あるいは産業として体系的に研究されることがなかった。それが数年前から少しずつ、人々の関心を呼ぶようになった背景には、次の二つのことがあげられる。一つは、ソウル放送で毎朝連続放映された、尹東赫プロデューサー制作の雑穀特集番組。もう一つは、江原道・原州にある神林農協の金キュドン組合長が5年前に「わが在来種雑穀を活かす運動本部」という組織を立ち上げたことだ。

 韓国では1960年代ごろまで、貧しくて米の代わりに雑穀を食べてきた歴史があるので、私より少し上の年代の人は雑穀を嫌う。白米をお腹いっぱい食べたいという思いから白米志向の風潮があったところに、近年、食生活の西洋化が急速に進んだ。その結果、新たに成人病など生命を脅かす問題が出てきて、その中で今度は、山菜、野草、雑穀など伝統的な食べものに新しい価値が見出されるようになった。

 韓国ではここのところ、米の年間消費量が減っている一方で、雑穀の消費量が増えているが、その多くは輸入品だ。そこで出てきたのが、有機農産物認定制度である。これは、安い輸入雑穀に対抗して国内農家を支援する助けになる。私の故郷、江原道の寧越にあるソナン農協には、韓国唯一の在来種雑穀工場があるが、そこで国産有機農産物を認定するようになったため、周辺に雑穀栽培農家が増えた。あたり一面、田んぼ以外はすべて、粟、黍、はと麦、大豆などのみごとな雑穀畑だ。

 もともと私は、蕎麦を専門的に研究してきたが、もはや蕎麦の研究においては、私でなくても業界の方を中心にかなり進んできました。でも雑穀は未開発の分野だし、私の故郷は雑穀村と呼べるほど、人々が高い関心をもって雑穀の栽培・普及にとり組んできたので、私もその一助になればという思いから、「雑穀研究会」そして「ライフシードコリア」を設立した。

 前述のとおり、神林農協の金ギュドン組合長が「わが在来種雑穀を活かす運動本部」を5年前に設立し、精力的に活動してきた。毎年10月に農協主催で開かれる雑穀まつりも、今年で5年目になった。祭を開くようになった背景には、人々の雑穀への関心を高め、雑穀の在来種を守って産業に結びつけたい、という思いがある。

 雑穀まつりでは、テントごとにいろいろなイベントが催される。その一つ、農産物直販所では、ソウルのマンションや、ある地域の住民など団体客がやってきて、直接取引をしていた。また、雑穀飯や山菜定食の無料サービス、雑穀料理の試食会、そして雑穀の収穫・脱穀といった体験コーナーや、子どもたちによる雑穀畑の写生大会、高きびの籾殻を使った草木染め体験などもあった。

 江原道・蓬坪は、そば畑を舞台にくり広げられる人間模様を描いた、李孝石の小説「そばの花咲くころ」(1936年発表)で有名になった。その後、地域の人々がこの小説を土台に、そばの名産地として蓬坪を発展させるために、毎年そばの花が咲く9月に「蕎麦まつり」を開くようになった。今年で8年目だ。

 蓬坪は人口5000人の小さな村だが、10日間の祭の間に韓国全土から約50万人が訪れ、経済効果は多大だ。数年のうちに全国的な祭へと成功させたため、国の文化観光部から「優秀祝祭」として指定された。村では祭用に14万坪もの蕎麦畑をつくり、訪問客に花を見せる。満月の晩が祭のハイライトで、月の光に照らされた広大な蕎麦畑は絶景だ。休耕地を使って観光のために蕎麦畑を維持しているということで、平昌郡と国の農林部から補助金が出ている。

 これらの経験を生かして、今後は、故郷寧越を拠点に、神林農協の金ギュドン組合長や尹東赫プロデューサーをはじめ、多様な分野の方々と連携して雑穀と未来食を推進する活動を展開していきたいと思っている。
 
 *講演の詳細は雑穀料理専門誌『つぶつぶ09』第9号(メタブレーン、3月10日発売)に掲載。777円。雑穀レストラン『つぶつぶかふぇ』は大江戸線「牛込柳町」駅から徒歩5分。℡03・3203・2093。ホームページhttp://www.tsubutsu.jp/

 雑穀の名産地、江原道・寧越出身で1956年生まれの朴チョルホ氏は大学卒業後、カナダのアルバーター大学を経て帰国、研究者の道へ進んだ。

 その後、日本における雑穀研究の第一人者、阪本寧男(現・京都大学名誉教授)氏と出会う。当時、韓国人が見向きもしなかった雑穀の種を採集し、一部は持ち帰り、もう一部は韓国に置いて行ったという事実を知り大きな衝撃を受け、雑穀種の実地調査に取り組み、2005年に韓国雑穀研究会を立ち上げた。

 2006年、「いるふぁ」と出会い、持続可能な食文化を創造するというメッセージに感銘、韓国でその活動を紹介し広めるためにライフシードコリアを発足させた。