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2008/08/08

<韓国文化>東京の『孤独と寂しさ』描く

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    「TOKYO<シェイキング東京>」から、主演は香川照之(右)と蒼井優

 韓国、米国、フランスの3人の映画監督が、それぞれの視点で撮影した映画『TOKYO!』が16日から全国公開される。『グエムル―漢江の怪物』が大ヒットした韓国の奉俊昊(ポン・ジュノ)監督は、東京で暮らす人々の孤独を、11年間ひきこもりの男性を通じて描いた。主演は、香川照之で相手役に蒼井優。

 ――東京が舞台の映画に参加したきっかけは。

 東京は、世界中で最も多く訪れたことがある街なので見慣れているはずなのに、決して見慣れることのない不思議な感じはなんだろう…とずっと思っていた。東京に対する好奇心が純粋にあったので、映画を撮りたいという気持ちと衝動に突き動かされて引き受けた。

 日本に限らず海外での撮影は、韓国と比べてシステムの違いがあるので不安や恐れがあったが、今回は30分の作品だったので、ぜひチャレンジしてみようと思った。日本のスタッフ、キャストと仕事を共にして、たくさんの勇気をもらった。機会があれば、今度はぜひ長編にも挑戦してみたい。

 ――実際に日本で撮影した感想は。

 日本のスタッフ、キャストだけと仕事をすることを選んだ。迷い込んだ一羽の鳥のような気持ちで、孤独に作業をしたいと思ったからだが、スタイルを変えるつもりはなかった。海外で撮影することで、どんな化学反応が起きるのかが楽しみだった。日本のスタッフは情熱的で繊細で、一緒に仕事ができて大満足している。孤独を感じる暇はなかった(笑)。

 ――東京の印象をどのように作品に反映したのか。

 東京の街は人はとても多いが、たまに誰もいないように感じるときがある。渋谷に向かう満員電車に何度か乗ったが、その車中でも、人々の間にある一定の保護膜があるような印象を受けた。お互いが不可侵のバリアをはっているように感じた。そこにいる人々は、他者に関心を向けるよりも、他者に迷惑をかけてはいけないという強迫観念にかられているようにみえた。そこから、寂しさとか孤独を強く想像した。

 また、「TOKYO NOBODY」(著者・中野正貴/リトルモア刊)という写真集からも影響を受けた。東京に誰もいないという写真集だが、東京の人たちがみんな引きこもって、この写真集のようになったら一体どうなってしまうのだろう…と想像したことが、今回のストーリーの出発点だ。想像すればするほど、そうなることは寂しく怖い気持ちになり、ストーリーに反映した。

 ――「シェイキング東京」というタイトルの意味は。

 シェイキングには、“地震”という典型的な意味だけではなく、“ゆれる”という意味もある。例えば恋をして気持ちがゆれる、心がつき動かされる―という心、気持ちの揺れ、つまりは『大きな愛』という感情をタイトルに込めた。もちろん、日本は地震が多い国なので、その要素もある。

 ――キャスティングについて。

 香川照之さんは、『ゆれる』(西川美和監督)や『鬼が来た!』(チアン・ウェン監督)の演技を観て、ぜひ一緒にやりたいと思っていた。主人公の引きこもりの傷つきやすく繊細な役は香川さんしかいないと考え、香川さんを念頭に脚本を書いた。

 蒼井優さんは、韓国でも人気があり、私も『ハチミツとクローバー』、『リリイ・シュシュのすべて』などを観た。今回の撮影で、妖精のような清純さと可愛らしさ以上に爆発的なパワーを持っている女優と実感した。竹中直人さんは、出演してもらっただけで奇跡だ。周防監督の映画に出てくる竹中さん観て、怪物のような役者さんだと思っていた。とても繊細な方で、撮影では大変助けてもらった。


  ポン・ジュノ 韓国で最も注目される監督の一人。1969年生まれ。代表作は『殺人の追憶』(2003)、『グエムル―漢江の怪物』(2006)など。


■『TOKYO!』■

 3人の鬼才が、独自の視点で東京を捉えた短編3本。「TOKYO<インテリア・デザイン>」ミシェル・ゴンドリー監督(米)=「人は何のために生きるのか」という問いを、ファンタジックな世界に包み込んだ、不思議な優しさあふれる物語。「TOKYO<メルド>」レオス・カラック監督(仏)=大都市の抱える不条理に満ちた世界を謎のカリスマ=メルドが疾走する。「TOKYO<シェイキング東京>」奉俊昊監督(韓)=恋に落ちていく男女の激しい心の揺れを視覚的にとらえた、珠玉のラブストーリー。