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2009/03/06

<韓国文化>在日の文化・スポーツ群像 飛翔2009 ① パク・ソヒさん(俳優)

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    パク・ソヒ 新潟県出身。早稲田大学卒業後、文学座附属演劇研究所入所。『エンジェルス・イン・アメリカ』などの演劇作品、『ラーメンガール』など映画・ドラマにも出演。現在the companyアソシエイト・アクター/アソシエイト・アーティスティック・ディレクター。

 文化、芸術、スポーツの世界で活躍する在日コリアンが増えている。各界の在日コリアンに活動への思いを聞く「在日の文化・スポーツ群像 飛翔2009」をきょうから連載する。1回目は骨太の演技が好評の男優パク・ソヒ(朴昭熙)さん。テネシー・ウィリアムズの小説「ストーン夫人のローマの春」の初舞台化作品(28日から東京・渋谷のパルコ劇場)に出演する。

 「欲望という名の電車」(48年)「熱いトタン屋根の猫」(55年)でピュリツアー賞を受賞するなど、米国を代表する作家テネシー・ウィリアムズ。「ストーン夫人のローマの春」は、1950年に発表した作品。

 舞台は第2次大戦後のローマ。旅行中に夫を亡くし、そのままローマに留まった50歳の元ブロードウェイ女優と、寂しい金持ち女性に美しいイタリア青年を紹介し、青年を通じて金を巻き上げる伯爵夫人、その伯爵夫人の命を受け、金持ちの女優を誘惑する元貴族のイタリア青年。女優を麻実れい、伯爵夫人を江波杏子の2大女優が演じ、元貴族をパクさんが演じる。この役のために大幅な減量に挑んだ。

 「年上の女性を愛する落ちぶれたイタリア貴族の青年という役なので、若さ、エレガンスさを出すために体重を減らした。米国人女性を本当は愛するが、貴族のプライドや、男娼当然の立場が邪魔して愛しているとは絶対に言えない。その内面の複雑さ、葛藤を演じるのが、難しくもあり面白くもある」

 早大商学部を卒業後、演劇の道に進むことを決め、故松田優作のファンであったことから、松田優作と同じ文学座に進んだ。2002年10月、tpt主宰の若手俳優のためのワークショップに参加し、そこで米国の著名な演出家であるロバート・アラン・アッカーマン氏に出会った。同氏から表現力と存在感を認められたパクさんは、ナチスによる同性愛者迫害を描いた『BENT』に主役として抜てきされ、第一歩を踏み出した。

 以後、アッカーマン氏演出による『エンジェルス・イン・アメリカ』『三人姉妹』などに出演し、たくましさと繊細さを兼ね備えた演技で、注目を集めた。

 2008年には同氏とともに演劇集団「the company」を立ち上げ、旗揚げ公演『バーム・イン・ギリヤド』、そして戦後の混乱期を舞台にした『1945』と出演した。

 「the companyでは俳優だけでなく製作総指揮を行っている。俳優は仕事が来るのを待つだけだが、ここでは公演の企画からキャスティング、チラシ・プログラムの作成、セットの準備など何でもやる。すべてに責任を持たないといけないので、大変だがやりがいがある。コンセプトはブレイキング・ザ・ボーダーズ(境界線をぶちこわす)。ワークショップに参加した100人近い若者に『1945』の舞台に出てもらったが、大人数の迫力が評判となった。また私自身も在日コリアンを演じたが、ボーダーを考える上で意義深い芝居になった。最高のエンタテイメントを今後も追求したい」

 「本名で演劇活動をやることを特に意識はしていない。日本社会は開放的になってきているので、在日もポジティブに生きられるはずだ。在日という不確かな存在に生まれたことも演劇に生かしたい。在日の若手演劇人のネットワークも作りたいし、『1945』韓国公演も行いたい。いつか韓国の映画や演劇にも出演し、在日の演劇人として韓国で評価されるかどうかチャレンジしてみたい」

 東京公演は2月28日からパルコ劇場、3月28、29日には大阪でも上演。