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2010/02/12

<韓国文化>韓日映画交流に貢献

  • 韓日映画交流に貢献①

    『グッドモーニング・プレジデント』

  • 韓日映画交流に貢献②

    『執行者』

 興行的に難しいインディペンデント映画を日本で上映し、特に韓国映画紹介に力を入れてきた「東京フィルメックス」が、昨年秋で開催10周年を迎えた。そこで上映された韓国映画が、今春相次いで全国公開され、シンポジウムで報告された韓日事業も動き出そうとしている。

 東京フィルメックスで上映された韓国映画は、『渇き』と『息もできない』の2本。『渇き』は、『JSA』など日本で大ヒットした作品を発表してきたパク・チャヌク監督、名優ソン・ガンホ主演の話題作で、クロージング作品として上映された。

 敬けんな神父がワクチン開発実験に参加したことが原因で、吸血鬼に変貌してしまうという異色作で、神父と人妻の禁断の愛も話題になった。カンヌ映画祭では審査員賞を受賞したが、賛否両論が巻き起こったという。東京フィルメックスでも観客の意見は割れており、2月に全国公開されるが、その映像は反響を呼ぶことだろう。

 『息もできない』(ヤン・イクチュン監督)は、やくざと女子高生がひょんなことで知り合い、心を触れ合わせる過程を描いた作品で、最優秀作品賞と観客賞をダブル受賞する快挙を果たした。3月に全国公開される。

 同時開催された「韓国映画ショーケース」では韓国映画最新作10本が上映された。中でも話題作は、昨年の釜山国際映画祭でオープニングを飾った『グッドモーニング・プレジデント』だった。キャラクターの異なる3人の大統領を主人公にした作品で、韓国民にとってある意味、最も身近な存在である大統領についての物語で、チャン・ドンゴンら3人が大統領を演じた。

 チャン・ジン監督は、「韓国では政治ドラマはあまり人気がないので、映画化を実現するのは大変だった。実在の大統領が実現できなかったことに挑む映画を撮りたいと考えた。青瓦台(大統領府)のセットに苦労した。映画を通して韓日交流に貢献できれば」と語った。同映画は今年、日本での公開が予定されている。

 『執行者』は、刑務官を主人公に死刑制度を取り上げた作品。チェ・ジンホ監督は、「韓日ともいまだに死刑制度が続いている。日本でも刑務官を描いた映画が作られたと聞いたが、刑務官はどの国でも同じ状況にあると思う。映画化を思いついたのは、死刑執行後、トラウマから逃れられない刑務官が多いという新聞記事を読んだのがきっかけだ。死刑や刑務所の問題について、考えるきっかけになってほしい」と話した。

 『亀、走る』は、刑事と逃亡犯の対決を描き、韓国でヒットした作品。イ・ヨンウ監督は、「40代で家族を抱える男を主人公に映画を撮ってみたかった。また私自身が田舎生まれなので、韓国の田舎を舞台にした。忠清道の人たちはのんびりしていて、亀のイメージがある。それで刑事に亀、犯人にウサギのイメージを出した」と話した。チェ・ジンホ監督もイ・ヨンウ監督も初来日で、作品が日本で紹介されるのも初めて。「日本のファンはとてもあたたかく迎えてくれた。映画を通した韓日文化交流を促進したい」とそろって語ってくれた。どちらも一般公開を期待したい力作だ。

 韓国映画ショーケースの関連企画として、「日韓映画市場の拡大方案のためのセミナー」(主催=韓国映画振興委員会、後援=韓国文化体育観光部・韓国外交通商部)も開かれた。

 韓国映画振興委員会のチョ・ヒムン委員長は、「韓日の映画市場、産業は成熟期を迎えている。未来に向けて両国市場の拡大方案を作成したい」とあいさつ。その後、韓日の映画関係者によるシンポジウムが開かれた。

 日本における韓国映画公開は、『シュリ』『JSA』などがヒットした後、公開本数が飛躍的に増えたが、2006年ごろから低迷が続き、上映本数も激減、ヒット作にも恵まれていない。その現状をどうするかについて、「韓日の映画市場拡大への戦略的提言(問題点と解決方法)」、「日本の映画市場におけるビジネスとしての韓国映画」「日本市場で韓国映画をどう市場拡大できるか」「韓国市場と日本市場の活性化」などのテーマで話され、韓日映画市場が緊密に協力する必要性を確認したセミナーとなった。

 韓国映画界は昨年から低迷期を脱出しつつあり、作品も多様化してきたが、活況を取り戻すにはまだ時間がかかるといわれる。一方、日本では映画配給会社の経営難が続いている。韓日映画界の提携、また東京フィルメックスのようにインディペンデント映画を広める映画祭の役割は、さらに高まるだろう。