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2012/01/20

<韓国文化>韓日若手アーティストの出会い

  • 韓日若手アーティストの出会い①

                      盧 敬愛

  • 韓日若手アーティストの出会い②

                    長内 裕美

 横浜ダンスコレクション(1月28日―2月19日)の一環として、ソウルダンスコレクションと横浜ダンスコレクションによる「日韓ダンス交流プロジェクト」が、28、29の両日、神奈川県横浜市の横浜赤レンガ倉庫1号館で開催される。韓国の盧敬愛(ノ・ギョンエ)、日本の長内裕美の両振付家が新作発表を行う。企画した高松有希子さん(横浜市芸術文化振興財団)に文章を寄せてもらった。

◆「社会と接点ある文化発信を」◆

 今年17回目を迎える横浜ダンスコレクションは、96年にスタートし、現在ではアジア最大級のコンテンポラリーダンスフェスティバルに成長している。

 当初のコンセプトは、「新人アーティストの発掘・育成」「コンテンポラリーダンスの普及・振興」「国際文化都市“横浜”の世界への発信」「広くダンス鑑賞の機会を提供する」。10年目を迎えた05年に横浜ダンスコレクションは新たなコンセプト「コンテンポラリーダンスの交流のハブ」を目指すこととなった。

 日本国内外を問わず新進アーティストにその才能を舞台上で開花させる場を提供すると共に、観客層にとっては最先端のダンスが観られる場を提供し、さらには海外のダンスフェスティバルや劇場のディレクターを招き、アーティストとの交流の場をセッティングすることで、若き才能が横浜から海外へ活躍の場を広げる場を創出している。前回は、11カ国から12人のディレクターが横浜ダンスコレクションに来場、うち韓国からも2人のダンスディレクターが来日した。これらディレクターとの交流から、参加した振付家の海外公演が数多く実現した。

 横浜ダンスコレクションと韓国との交流は04年に始まる。丁永斗(チョン・ヨンドゥ)が「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。その後韓国からの応募が増え、これまでに応募者23組中、8組が受賞をするという好成績を残している。この受賞をきっかけに、韓国外に活動の場を広げ、活躍している振付家・ダンサーも出てきている(2月の「横浜ダンスコレクション2012」コンペティションの本選にも韓国から3組の振付家が参加)。

 横浜、ソウルそれぞれのダンス・コレクションを通してコンテンポラリーダンスに取り組むにあたり、共通の課題が浮き彫りになった。活躍の場が広がり各国で公演の機会を得ることができるような状況になってはいるが、一方でその多くが単発の公演であり、アーティストが自身の創作過程に真摯に対峙し探求するという深い体験を自身では得にくい、というものだった。

 そこで、横浜ダンスコレクションと、ソウルダンスコレクション主催するソウルパフォーミングアーツフェスティバル(SPAF)は、日韓両国のアーティストが出会い、交流し、相手から吸収するその過程に注目し、その経験が今後の彼らの活躍の場を広げる糧となり、新たなアートを生む源泉を創出するプロジェクト「DANCE CONNECTION」を立ち上げた。

 プロジェクトには、横浜ダンスコレクションとソウルダンスコレクションのそれぞれの受賞振付家から、各フェスティバルが意欲やその経歴等を鑑みてふさわしいと推薦した振付家が参加する。参加振付家は、横浜とソウルに各1カ月程度滞在。それぞれのワークやテクニックなどをお互いにリサーチし刺激を受けながら、その経験を小作品に結実させ、両国で発表する。さらには、市民向けワークショップ、地方都市でのミニパフォーマンスを開催することを通じて、スタジオ内の活動に留まらず、社会と接点のある文化発信となることを目標にしたプロジェクトになっている。

 今年度のプロジェクト参加者は盧敬愛(10年ソウルダンスコレクション受賞振付家)と長内裕美(09、10年横浜ダンスコレクション受賞振付家)。年齢もバックグラウンドも異なる二人のそれぞれの視点~Two Aspects~でプロジェクトに取り組み、既に韓国でのレジデンスを終え、10月のソウルダンスコレクションでそれぞれの作品を発表している。表現方法は異なるものの、どちらもシンプルに身体を捉えなおす作品は、観る者に心地良い緊張感を与えると高い評価を受けた。

 両振付家の作品に出演し、横浜でのパフォーマンスも楽しみなのがチョ・ウンジン。弘益大学校ビジュアル・コミュニケーション・デザイン部を卒業し、ソウル国際実験映画祭「ExiS」などでオーディオビジュアル作品を発表している。現在は、ビジュアルグラフィック作品とダンスプロジェクトを「芸術の創造」という共通テーマのもとで、調和させる活動をしている。その存在感がステージで光るパフォーマーだ。自分たちと共通のメソッドを持たない彼女に対して、両振付家がどういったアプローチをとるのかも注目される。

 12月から、いよいよ横浜でのレジデンスがスタートした。韓国で好評を博した作品が、横浜でどのように深化するのか。また今回は青森県八戸市での公演も決定している“Two Aspects”がどのような形で発展していくのか注目される。


■日韓ダンス交流プロジェクト
日程:28、29日午後3時開演
場所:横浜赤レンガ倉庫1号館
 *両日共アフタートークあり
料金:一般前売1500円、当日2,000円
 *学割あり
電話:045・211・1515
 *2月3日に青森県八戸市の「はっち」でも同公演あり