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2017/02/10

<韓国文化>歌と友情と嫉妬の物語

  • 歌と友情と嫉妬の物語

    歌と愛に生きた妓生たちを描いた『愛を歌う花』
    (c)2016 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

  • 李喆雨・コリアアーツセンター代表

                李喆雨・コリアアーツセンター代表

 日本統治下の1943年の韓半島を舞台に、時代に翻弄されながらも歌と愛に生きた妓生たちの生き様を描いた映画『愛を歌う花』が日本公開された。同映画について李喆雨・コリアアーツセンター代表に原稿を寄せてもらった。

◆韓国映画『愛を歌う花』を観て  李喆雨・コリアアーツセンター代表◆

 『愛を歌う花』(原タイトル「解語花/ヘオファ」)は、日本植民地下の1940年代、朝鮮の京城(ソウル)唯一の券番(妓生養成学校)で天性の歌声と美貌を誇った、無二の親友ハン・ヒョジュ(ソユル役)とチョン・ウヒ(ヨニ役)が作曲家ユ・ヨンソク(ユヌ役)の新曲〝朝鮮の心〟発表をめぐり繰り広げられる歌と友情と嫉妬の物語である。

 監督のパク・フンシクさんも〝人間の最も普遍的な欲望を描きたかった〟と言っているように、何時の時代にもこの〝普遍的な欲望〟に翻弄されるというのが人間の愚かさであり弱さであるということか、と映画は問いかけている。

 原題の〝解語花〟というのは、俗にいう妓生のことで、広義には〝どんな人のいうことも理解できる能力と教養を身につけ、そのうえ芸(伝統舞踊、伽耶琴、書画など)も一流でなければならない〟ということから言われたことである。

 当時、その〝券番〟から多くの歌手が誕生しスターになったが、実在の歌手玉寿福(1917~2005)や鮮于一扇(1919~1989)を彷彿とさせたのは、ハン・ヒョジュ自身が歌った歌曲(カゴク=詩調に曲を付けた歌)、チョン・ウヒが歌った流行歌〝死の賛美〟などで、原曲をよく魅力的に再現していて聴き応えがあった。

 特に久々に聞く歌曲が懐かしくその音色も印象深かった。

 印象的といえば、作曲家ユ・ヨンソクの〝朝鮮の心〟に寄せる苦悩を反映したピアノ独奏〝アリラン〟を弾く場面もそうであった。

 ユ・ヨンソク演じるユヌは作曲家らしくヨニが歌う「死の賛美」のピアノ伴奏を直接こなし、「朝鮮の心」が発売禁止され苦悩する作曲家の内面を民族の恨を象徴する〝アリラン〟を立派に演奏することによりその思いを表現した。

 音楽監督のイ・ビョンフン氏は、「ユ・ヨンソクは現場で編集なしでピアノを演奏した。撮影中もキーボードを持ち歩きながらよく練習し一回で完成させよい場面を残した」と、評価している。

 前述した歌手玉寿福と鮮于一扇は今風にいえば当時アイドル歌手のような存在であったが、解放後ともに越北し、玉寿福は主に平壌放送を通じて「アリラン」「かっこう」など新民謡を歌い人気を博し、1997年「80歳記念コンサート」を行い話題となった。今年生誕100周年になる。

 一方、鮮于一扇も新民謡「ニルリリヤ」「しだれ柳」など数々のヒット曲をレコードや放送などで歌い人気を博し、後に音大などでも教えたが、その血筋に現在モランボン楽団のコンサートマスターを務めるバイオリニスト鮮于香姫がいる。

 映画は、当時歌われた流行歌のはしりといわれる声楽家(ソプラノ)の尹心悳が日本でレコーディングしヒットした〝死の賛美〟(曲はイヴァノビッチの〝ドナウ川の漣(さざなみ)〟の旋律、詞は不詳)や当時〝民族の涙〟とも言われた李蘭影(イ・ナンヨン)の歌う〝木浦の涙〟など実在人物や歴史的によく知られた歌をたくみに織り交ぜながら、架空の歌〝朝鮮の心〟という歌をストーリーの軸にした着想も、この時代を反映した試みとしてこの映画を面白くしている。


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