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2009/04/10

<トピックス>総括・G20首脳会議と韓国

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    G20参加国首脳ら。前列左端が李明博大統領

 英国のロンドンで2日開かれたG20(主要20カ国・地域)首脳会議(金融サミット)は、世界経済の危機克服のため5兆㌦の景気対策を講じる一方、金融システム再構築のため一定規模以上の金融機関をすべて規制対象にする成果をあげた。共同議長国の韓国は、保護貿易主義を排撃するなど発言力を強め、世界不況で苦しむ新興・途上国の立場を代弁した。韓国の役割を踏まえ今会議を総括してみた。


 今回のG20首脳会議の合意内容は大きく次の4点からなる。

 ①各国は来年末まで総額5兆㌦の景気浮揚策を講じる②IMF(国際通貨基金)の財源を7500億㌦に3倍増し、東欧・途上国支援などに最大1兆1000億㌦を充てる③金融危機再発防止のため、国際安定フォーラム(FSF)を金融安定理事会に拡大改編し、国際的に規制を強化する④保護貿易主義措置の禁止を来年末まで継続する。

 第1の景気対策。世銀見通しでは今年の世界経済成長率はマイナス1・7%に落ち込む。これを来年にはプラス2%に引き上げるため、各国の財政出動の合計が5兆㌦をするというもので、米国が主張するGDP(国内総生産)比2%には及ばないが破格的な額だ。

 第2の金融危機にある東欧諸国や途上国の経済危機に対処するため1兆1000億㌦の対策を講じることも大きな意味がある。また、IMFの出資比率見直しを2011年に前倒し実施して、韓国など新興国の発煙権が高まることになった。

 第3の国際的な金融規制強化。各国の金融当局でつくるFSFの機能を強化し、韓国などG20メンバーすべてが参加する金融安定化理事会(FSB)に改組する意味も大きい。「強力で世界的に一貫性のある監督規制の枠組み」(共同声明)であり、金融危機の再発を防ぐため、銀行以外のヘッジファンドを含め一定規模以上の金融機関をすべて監督する機構となる。韓国などが主張したタックスヘイブン(租税回避地)の国・地域への監視も強化する。

 第4の保護貿易主義排撃は韓国の最大の強調点。前回のサミットで約束した保護貿易措置禁止が形骸化し、これまでに17のメンバー国で保護貿易的政策がとられたことを重視、大恐慌→保護主義→通貨切り下げ競争→第2次世界大戦に至った「歴史の過ち」を繰り返さないため、「2010末まで保護主義的な措置をとらない」ことを誓約した。

 李大統領は今回のG20首脳会議で開発途上国や新興国の立場を代弁するのに力を入れた。演説では「この困難な状況で、指導者たちは世界に向けて希望のメッセージを発信しなければならない。具体的な合意を導かなければ、経済危機で苦痛を受けている人たちに希望を与えることができない。開発途上国にとっての希望は景気の改善だ」と強調した。

 特に、保護貿易主義を排撃、バハマなど租税回避地に対する管理、国際金融機関の改革、新興国に対する流動性と貿易金融支援などを重要課題として指摘した。

 問題の不良金融資産処理については、韓国が1997年の通貨危機を克服した経験を事例として取り上げ、①政府主導での解決②株主・金融機関従事者・資産所有者などの公平な費用負担③民営化計画など出口計画の同時発表④不良資産に対する事後価格算定の4点を原則にすべきと提示。

 最も力点を置いた保護貿易主義排撃については、ドーハ交渉の再開を引き出すことはできなかったが、WTO(世界貿易機関)会員国の保護主義障壁をチェックする監視装置を設けるのに成功したのは大きな収穫だった。青瓦台(大統領府)関係者は、「韓国は今後もG20体制に積極的に関与し、世界経済の危機克服のプロセスでより大きな貢献をする、というのが李大統領の覚悟だ」と述べた。

 英国首相のブラウン議長は、会議を締めくくりにあたり、「新自由主義に基づく米主導のワシントン・コンセンサスは終わった」と総括した。米国一国主義の終焉とも受け取れる発言だ。「資本主義対資本主義」と欧米の軋みを表現した人もいたが、資本主義の未来に対する検討を余儀なくさせた会議でもあった。だが、目前の危機に処方箋の違いを論じ合う猶予はない。参加国が危機の対処へ問題意識を共有した意義は大きい。

 次回サミットは9月にニューヨークで開催される公算が強いが、具体策や合意事項の実施などを見守る必要がありそうだ。また、韓国は今年の共同議長国に続いて、来年には議長国を引き受ける立場であるだけに、世界経済の流れを決めるG20に見合う役割を果たす使命がある。