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2009/04/17

<トピックス>揺れる成長率予測

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 今年の韓国経済はマイナス成長が避けられない見通しだ。韓国銀行は10日、今年の修正経済展望を発表、GDP(国内総生産)成長率は前年比でマイナス2・4%に低下すると予測した。昨年12月の展望値マイナス2・0%を下回る。政府の景気刺激策の執行など政策効果も計算に入れての下方修正であり、景気の先行きを厳しく見ていることを窺わせた。マイナス成長に陥れば1998年(マイナス6・9%)の通貨危機以来11年ぶりのことだ。だが、一部経済指標が上昇しており、早期景気底打ち論も出ている。韓国経済の先行きを占ってみた。

 韓銀の経済展望によると、上半期(1~6月)の成長率は前年同期比で4・2%のマイナスに陥るが、下半期(7~12月)にマイナス幅は0・6%に縮小、年間でマイナス2・4%になるというもので、政府の修正展望であるマイナス2%よりやや厳しい。

 韓銀は、「景気底入れは第2四半期(4~6月)か第3四半期(7~9月)になるが、来年上半期まではぐずついた状態が続くため、底入れの意味は大きくない」と見ている。ただ、来年の成長率については、内外の需要回復を追い風に3・5%のプラス成長に転じると見込んでいる。 

 景気の現状に対する韓銀の厳しい見方は、成長の重要尺度である民間消費と設備投資が振るわないからだ。民間消費は、低金利と政府の民生・雇用安定対策にもかかわらず家計購買力の低下などで年間2・6%減少し、設備投資は企業の業況不振などで18・0%の大幅減になるという分析だ。

 韓銀は、世界の景気低迷は各国の景気てこ入れ策で次第に緩和されるだろうが、投資心理の委縮などではっきとした回復には相当な時間がかかるとみている。

 これに比べ、政府はやや楽観的であり、尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)・企画財政部長官は、13日の国会企画財政委員会で、マイナス成長を回避できる可能性も示唆した。尹長官は、経済状況が良くなれば経済成長率0%も可能かという議員の質問に、「あるメディアとのインタビューで、もし状況が改善され補正予算が効果を発揮し、0%成長になるならば大成功ではないかと話したことがある」と答えた。また、良くならない場合の予想を問われると、尹長官は今の流れではさらに悪化するとは予想していないと答えた。

 政府は先月の補正予算案提出の際、今年成長率をマイナス2%と予測しており、今回の長官発言は、政府が2~0%と予想していることを示した。

 尹長官発言を裏付けるように、年初に比べ一部経済指数は上昇している。例えば韓銀調査の製造業の業況指数(BSI)は3月に57を記録し、前月の43を14ポイント上回った。昨年10月以来最も高い数値だ。業況指数は、基準値100未満ならば、業績が悪化したとする企業が改善されたとみる企業より多いことを示す。体感景気悪化の度合が3月はかなり減少したことになる。

 業況指数上昇は、ウォン安で輸出企業の採算性が改善し、半導体と石油化学など一部輸出商品に対する需要増大が大きい。特に、「3月危機説」などで一時不安心理が高まった金融市場が安定を取り戻したことも影響している。

 また、中小企業の稼働率も2月には63・9%に前月より1・3ポイント上昇した。消費財販売も前月比5・8%増え、前向きな信号が点滅している。例えば、新世界が全国50カ所のイーマートで販売された1億3900万件の商品を分析した3月のEマート指数は95・6を記録、前月より1・3ポイント高まった。景気回復というには、まだ微々たるものであり、「最悪時は脱した」と見ることも可能だ。

 貿易は輸出入とも減少したが、貿易収支は200億㌦に達し、経常収支も160億㌦の黒字を記録する見通しが出ているのも経済への安心感のもとになっている。

 だが、輸出、消費、設備投資の回復が遅れている。特に、機械受注など企業の投資と関連した指標はまだ上向いておらず、設備投資は萎縮している。楽観は禁物だ。 

 韓銀は、性急な景気回復には慎重な立場だ。李成太(イ・ソンテ)総裁は、2カ月連続で凍結している金利について、「政府が補正予算を執行し、強力な景気てこ入れ政策を採るだろうが、消費と投資心理はかなり萎縮しており、世界経済の短期間の回復も容易でない」として追加引き下げの可能性も示唆している。

 これは、台頭し始めた景気の先行きに対する楽観論を警戒したものだろう。世界経済が回復しない限り、輸出依存が高い韓国単独での景気回復は困難であるという宿命から逃れることはできないからだろう。それでもプラス成長へ向けての努力が傾注されれば思わぬ効果を生むかも知れない。 

 マイナス成長の直撃弾を受けるのは雇用であり、統計庁によると、3月の就業者数は2311万人で1年前に比べ19万5000人(0・8%)減った。1999年3月(39万人減)以来の大幅減少だ。政府は、下半期に景気が持ち直し補正予算執行などで減少幅が9万人に抑えられると予測しているが、低所得層への打撃がひときわ大きいマイナス成長からの脱却のため懸命な政策展開が必要だろう。